さて、学校に着いたあたしは、
放課後の誰もいない教室に連れていかれた。
座って待っていると、別の教師が入ってきた。
2学年上のヤンキーをパイプ椅子で殴り、気絶させたことがある坊主の教師である。
彼は数学の教師だが、彼の授業前はみな、2分前から着席して待機、授業中はムダ話を一切せず、ただただ時間が過ぎるのを待っていたものだ。
よりによってなんでこいつ?
つくづくあたしも運がない。
その教師の話だと、あたしと同じように、あたしが一緒に煙草を吸っていた仲間が来ており、それぞれ別の教室で尋問を受けているという。
結局あたしは、坊主教師の理不尽な尋問によって、
3人の仲間(実際に一緒に吸ったことのある友人は2人)と、
1日10本程度吸っている(実際はみつかるまでのトータルで10本程度)人間にされてしまった。
教師ならば、教え子の罪が少しでも軽いことを望むはずなのに、
逆に罪をデカくするとは何事なのかい?
交通事故を起こして、交通課で調書をとられていた時、
その調書を取っている人の言い回しによって、
事実よりもどんどん自分が不利になっていくのを聞いていて、
ああ、煙草がみつかった時もこんな感じだったなぁ、と懐かしく思ったものだ。
その後、校長室へ呼ばれ、担任の教師にビンタを受ける。
取調べを受けていた仲間が校長室に集結する。
あたしの他に3人。
そのうちの1人とは確実に一緒に吸ったことがないので、
「あたし、アンタとは吸ったことないよ。なんで嘘つくの?」
と言ったら、
「そうだったっけ?」
とすっとぼけられた。
よく考えたら現行犯ではないのだから、誰かがあたしの名をあげたことになる。
誰だよコノヤロ。
しかし吸ったことは事実なのだから仕方なし。
そのあと4人は、保護者が到着するまで、校長室の片隅に正座させられた。
それぞれの親が到着。3人は母親だが、1人は父親である。
作業着で来ているところをみると、仕事をぬけてきたのかもしれない。
そこまでして親を呼びつける必要があるのか?
校長室に並べられた親御さん方は、教師らから
いかにアナタ方のお子様が不良な行為をしていたか、を聞かされる。
「それ違うだろ」
ってなこともいろいろ言われた。
話がどんどん大きくなる。
そして最後に
「親御さんから出来損ないの子供へ一言」
というコーナーを設けられ、
「出来損ないの子供から親御さんへ一言」
のコーナーも勿論あり、更には
「出来損ないの生徒から教師へ一言」
のコーナーまで。
親が子へ叱るなりなんなりするのは、家に帰ってからたっぷり出来ることである。
なのに、わざわざ教師がみている前で親にそんなことをさせるのは、ただの悪趣味だ。
当時はあたしも子供だから、
大変なことをしたなぁ、と反省もしたが、
今思えば、教師の自尊心を満足させるために、自分達が見世物になっただけであり、
煙草を吸っていたことは、実は教師達にはどうでもいいことだったんじゃないか、とすら思うのだ。
教師らが駄目だ、ということには何の重さも感じられず、逆に反骨精神を育てるだけだった。
家に帰って父親にこっぴどく叱られる、と覚悟していたのだが、
父親は、教師のようにただガーガーと怒るでなく、
「オマエ、煙草おいしいと思って吸ってる?
おいしい、と思うんなら家で吸ったらええ。
そのかわり、肺真っ黒になるし、お父さんみたいに歯の裏も真っ黒になるで」
と言ってニヤッと笑い、自分の歯の裏を見せた。
あれは説得力あったなぁ。
(オトンはヘビースモーカーだったが、あたしが生まれる前にやめている)
小日向ヒカゲ
|