あたしが小学生の頃、芸能界を賑わせていたのはアイドルだった。
「ザ・ベストテン」「ザ・トップテン」「夜のヒットスタジオ(皆は略して「夜ヒット」と言っていたが、あたしは「ヒットスタ」と言っていた)」など、今よりももっと純粋な歌番組がたくさんあった。この時代、サザンオールスターズや井上陽水などの、「アーティスト」と呼ばれるククリの人々は出演を辞退するのが普通であり、ましてやバンド形態をとっているアーティストがランキングに上がってくることはなく、上位にいるのは常にアイドルであった。稀にアーティストがランクインしていたとしても、いつも「レコーディング中です」やら「ツアー中です」などと、まるで触れてほしくない事実を隠すかの如く、久米宏が早口で説明していたものだ。
で、そのアイドル。この時代売れていたアイドルは、たのきんトリオ(田原俊彦、近藤真彦、野村義男の3人アイドルの総称。今や、よっちゃんが余裕の中年ライフを満喫)、シブがき隊(薬丸裕英、本木雅弘、布川敏和の3人トリオ。崩れていないのはモックンのみ)、少年隊(錦織一清、植草一秀、東山紀之の3人トリオ。確かヒガシは途中参加にも関わらず、今や少年隊の代名詞)や、松田聖子、小泉今日子、中森明菜、早見優(当時英語が喋れるだけでセンセーショナル)石川秀美(ヤックンの奥さん)、堀ちえみ、松本伊代(ヒデミの奥さん)などがいた。
巨乳御三家と言えば、榊原郁恵(リアルタイムではないが)、河合奈保子、柏原芳恵だが、現代の娘さんのことを思えば、可愛い乳。
そしてフェロモンと言えばこの人、武田久美子だが、この人は近藤真彦と映画で競演し、反感をかうはめに。
ズラズラと名を挙げたが、友人が「ヤックン最高!」なんて言っている横で、あたしは実に冷ややかであった。そう、あたしはこの時代からヒネクレ者であり、何故ヒネクレたかは前述の通りであり、「そのせいだけじゃないんでないの?」なんて思わずにはいられないが、そんなことは今は問題ではない。
あたしがこの時期に好きだった人。それは。
渡辺徹(ヤセ時代)。
ついで松田洋治(のちに「家族ゲーム」というドラマで長渕剛と共演。この頃はまだ子役)。
さらに京本雅樹(ウルトラマンフェチなどということは知る由もなし)。
もひとつついでに、当時、乳製品(フルーチェではないけどフルーチェみたいな食い物)のCMに出ていたアメリカ男子(正直、顔を全く思い出せないがかなり好きだった)。
カワイクない。
友人が、こぞって筆箱にアイドルの写真やロゴを貼っている中で、あたしは自分の筆箱に、当時大流行したペイントマーカーを使い、汚い字で「渡辺徹LOVE」と書き、新聞から切り抜いた2センチ四方の松田洋治を下敷きに挟んでいた。正直気持ち悪い。
好きなテレビ番組は、勿論「太陽にほえろ!」だ。おっさんである。
アメリカ男子はさておき、あたしが好きになった3人は、今でも現役で活動しているし、なにより、いい年の取り方をされている。松田洋治は演劇の世界で活躍している。先見の明があったのだな。そう思うことにしておこう。
それにしても、今の音楽。たまに「カウントダウンTV」なんかを観るが、明らかについていけない。ちょっと観ていない間に、知らない人のオンパレードである。アイドルらしいアイドルもいず、バンドやアーティスト(気取り)が溢れかえっている。アジカンみたいなバンドが一位をとるなんて、あたしが小学生だった頃には想像もつかない事だ。
音楽チャートというのは、その時代を反映するものであり、決して「その時代に出た良い音楽の集まり」というわけではない。
よく若者が「え〜!○○も知らないの〜??遅れてるよね」なんて言うが、人間、生きることを重ねると、興味を示すものも移ろうてゆくもので、単純に音楽チャートに興味を失っただけの話である。この世には、大人が楽しめるものがたくさんあるのだ。
そんなあたしは「ファイナルファンタジー12」の発売を心待ちにしている、成長できぬ大人どす。
つづく
小日向ヒカゲ
|