音楽をやっている者に「バンド(音楽)を始めたキッカケは何」と問うと、「女にモテたい」やら「目立ちたいから」なんつー純真でアホな答えの中に、「父親がジャズ好きで、赤子の頃からそれを子守唄代わりに聴いててさ」やら「兄貴がバンドをやってたから小学生の頃にはギターで遊んでてさ」なんつー「さらさらその気はないけど気づいたら音楽一貫自然教育」的な発言をする奴がいる。
別にいいさ、それも真実。
しかし腹立つ。
関係ないけど「お父さんが勝手に写真を送ってたんです」やら「もともとモデルという職業に興味はなかったの」なんつー「何がなんでもこのポジションに」てな熱いところを見せない、ラッキーガール気取りのモデルなり女優なりもいる。
これも腹立つ。
かたや、事務所にプロフィールを送りつけても第一次選考にも引っかからぬ人間もいる。
モデルや女優になるため、コツコツ頑張っておる人間もいる。
そんな人間から言わせれば「そんなんやったらとっととやめて枠増やしてくれや!」ってなところである。
話を戻して「気づいたら音楽一貫自然教育」の人間。
あたしは単純に、赤子の頃から「童謡」やら「みんなの歌」やら「開け!ポンキッキ」のような、所謂「子供向けの音楽」ではなく、ジャズやらロックやらブルースやらクラシックやらシャンソンなんぞの「大人の音楽」を聴いて育った人間が羨ましい。
「開け!ポンキッキ」で使用されている音楽は、実はかなりシュールだったということはこの際抜きにして。
あたしは音楽とは無縁な両親の間に育った。気がする。おそらく無縁のはずだ。
今になっても親の音楽的趣味を伺い知れない、ということはそうなんだろう。まぁ、その時代に流行っていた歌謡曲を普通に聴いていた程度だろう。
でも、何故かスッキリしない。何故か。何故ならば、そんな無縁な筈の核家族の団地の室内に、無縁に似つかわぬ、エレクトーンてな、小洒落た楽器があったからだ。
そのエレクトーン。
気づいたら、姉が習っておった。しかし 、当時のあたしはアホだった(今もか)。写真を見返してみれば、あたしの顔或いはポーズはどれもこれもふざけており、大概が「クシャおじさん(ってそんなん誰も知らないか)」である。
(クシャおじさん。)
であるから、幼稚園児の姉が通うエレクトーン教室に付いていっては「うへー。うへー」と鼻を垂らして騒ぐのみ。家に帰れば、練習する姉の横に着き、低音部黒鍵のみで仕上げた「おどろおどろ曲」を、うへへと笑って奏でて姉を泣かせておったのである。
いいのか!?あたし!
今、文章をぽちぽちと書いておるあたしは、当時の鼻垂れに問いかけるのであった。
小日向ヒカゲ
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