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>> 毎月10日・25日頃更新

<筆者プロフィール>

小日向 ヒカゲ(こひなた ひかげ)
1971年1月19日夕刻誕生
三重県出身→大阪育ち→三重県更に育ち→愛知県名古屋市仕込み期→東京都まだ仕込み期  3大都市バイリンガルB型

:興味
昭和 エログロナンセンス チョコレート

:ギターを始めるキッカケとなった人物
布袋寅泰 ジェイル大橋

:学校のつまらなさを誤摩化してくれた人物
筒井康隆 星新一 三島由紀夫 ラブクラフト 江戸川乱歩

成長期に読んだ漫画
ブラックジャック 北斗の拳 スケバン刑事 三国志 まことちゃん Dr.スランプ ハレンチ学園

WEB http://www.geocities.jp/betecha/

   

 
>>BACK NUMBER
Vol.1 イントロダクション
Vol.2  「無縁家族」
Vol.3  「ロック漫才師」
Vol.4 ちょっとここらでコーヒーブレイク
其の壱 「厳しすぎるは田舎の校則」
Vol.5  「洗礼」
Vol.6  「御臨終」
Vol.7  「体育館前リサイタル
Vol.8 ちょっとここらでコーヒーブレイク 
其の弐 「アイドル黄金時代」
Vol.9  「ドラムライン」
Vol.10 「肺活量マキシマム 」
Vol.11 「 麒麟です 」
ちょっとここらでコーヒーブレイク 
その参 「 塊の恐怖 」
Vol.12 「呪音」
Vol.13 「 浮かれちまったアホ面に 」
Vol.14 「 キミはカゲロウのように 」
ちょっとここらでコーヒーブレイク 
その四 「 ニコチン知らず 」


第15回 「 KISSいきなり地獄 」
 



後輩である園田にテナーサックスの座を奪われたあたしは、本格的にグレて部活に出なくなってしまった。


たまに部活に顔を出しても、もはやそれはドラムを叩くためであり、バリトンを触るためではなかった。今となっては、3年生の時のコンクールに出たのかどうかも覚えていない。覚えてない、ってことはおそらく出てはいないだろう。

どうでも良くなっちまったのだ。要するに。

それにしても、この頃のあたしはついていない。後輩にテナーの座を奪われるわ、友人に彼氏を寝取られるわ(キスマークあったから多分そうだ)、親には英文科のある学校への進学の道を断たれるわで、まさにフンダリケッタリである。

こんな調子であるから、卒業式ではサッパリしたもので、思春期真只中であるにも関わらず、涙のひとつも流さず、第2ボタンが既に無い元カレの胸元を冷めた目で眺め、只タダ、高校に入ったら思いっきりバンドをやることだけを思っていた。

さて、高校生。
「バンドメンバーを募集しています。興味のある方は、あたしに声をかけてください」
そんな自己紹介をした。

友達100人欲しい。勉学に励みたい。そんなことよりバンドメンバー。これがないと、あたしの高校生活は暗雲たるものになる。何がなんでも、高校生のうちに、己の音楽性を固め、卒業と同時に花々しくプロデビューする。それがあたしの計画。そのためには、恋などせんでもよい。そう思っていた。アホ。

入学して暫くすると、一人の男子が声をかけてきた。
「小日向さん、何か楽器やってんの?」
「へ?」

う。しまった。しまったぞ!バンドをやりたい、卒業と同時に花々しくデビュー、なんて言っておいて、よーく考えたらあたしには確固たる担当楽器がないではないか。中学を卒業する時には、漠然とドラムをやりたい、とは思っていたが、特別練習などしておらん。困った。

「え、えーと、ド、ドラム?(何故か疑問系)」
「え!ドラムやってんの?すげー」
「あ、えとあの、ドラムを、やりたいなぁ、と」
「あぁ、そゆこと?」
「まぁ、そゆこと」
「俺、ギターやってるよ」

 ギターキター!!!!

「エ、エレキ?」
「そうだよ」

 エレキギターキター!!!!!!!!

エレキギター。この悪い感じ。不良な響き。すごい。すごすぎる。

そう。あたしはバンドをやりたい、と強く願っていたわりには、特別、聴く音楽が人と違ったわけでもなかったし、ギターやベースに詳しいわけでもなかった。ましてやギターは弦が6本もあって難しそうであり、他のパートをやることがあっても、自分は絶対にギターだけはやらないだろう、と思っていたのだ。そのギターが、あっという間に見つかった!道は開けたも同然や。

あたしが高校生の頃は、まだバンドブーム前で、今のように、猫も杓子もギターをかじったことがある、という時代ではなく、田舎であることも手伝って、楽器をやっている人間など本当に一握りしかいなかった。

声をかけてきてくれたギタリスト、鈴本くんとは急激に仲良くなり、休み時間には音楽やバンド、楽器の話を延々としていた。
鈴本くんは、生粋のヘビメタ男で、メタリカやオジーオズボーン、ブラックサバスなどを好んで聴いており、また日本のインディーズにもめっぽう詳しかった。

彼の影響を受け、あたしの音楽的趣味は変貌を告げていく。

そこで登場、聖飢魔U。

聖飢魔U、と書いて、せいきまつ、と読む。10万年以上も生きている悪魔の集団である。KISSのパクリにしか見えんけど。

とにかく彼等はセンセーショナルであった。デーモン小暮がまだ市民権を得ておらず「鑞人形の館」もヒットする前。KISSのメイクを真似たその出で立ちは、メタルバンド「ACTION」の次にインパクトがあった。

「聖飢魔Uはさ、元々コミックバンドなんだけど、(デーモン小暮はその昔、サンプラザ中野とバンドを組んでいた)やってることはすごいよ」

鈴本くんは熱く語る。

やっていることはすごい、か。いや、そんなことより。

このギターの人、ちょーカッコエエやんけ!!!

聖飢魔Uのファーストアルバム「悪魔が来たりてヘヴィメタる」(ふざけたタイトルだな・・・)のジャケ写に写っている、KISSのエリック・カーのようなメイクをしているその男!ギターを持ったその男!彼の名は。

「JAIL大橋!」

ジェイル大橋。あたしは彼に一目惚れしてしまったのである。


それからというもの、あたしは、明けても暮れてもジェイル大橋。寝ても覚めてもジェイル大橋。御飯のお共にジェイル大橋。勉強しながらジェイル大橋。まさに大橋さん三昧だったのである。

暫くして聖飢魔Uはお茶の間に足を伸ばし、瞬く間に世間に浸透。お陰でテレビでもビデオでも、ジェイル大橋様を拝見することができるようになる。

しかし彼はギタリストである。ドラマーではない。えーっと、聖飢魔Uのドラムドラム、ドラムは、っと。銀色のモヒカンのヅラかぶった3枚目な男・・・。彼の名はライデン湯沢・・・。かっこいくねー!(失礼致します)

却下!!!(重ねて失礼致します)

あたしは、あっという間にドラマーを目指すことをやめてしまった。この頃に、トミー・リーやYOSHIKIなどに出会っていれば、あたしはドラマーになっていたのかもしれない。(たびたび失礼致します)

しかし「ギターなんてどうでもいいぜ」と言うには、ジェイル大橋はかっちょよすぎた。

彼の奏でるギター。踊る指先。チョ-キング時のエロイ顔。

「ギターにしよっかな」

これがギタリスト、ヒカゲの誕生前夜。



・・・つづく



小日向ヒカゲ





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