週末は田舎にいます・・・
どこかのキャッチコピーみたいでかっこいい。
しかし現実は厳しいのだ。
コンビニを止めたとは言え、相変わらずの遠距離通勤。
片道約3時間半。
写真屋2店のうち1店は大手スーパーのテナントとして出店していた。
だからなにがなんでも開店朝10時、閉店夜9時は守らなければならない。
もちろんパートさんが入ってくれる日は問題ないのだが、どうしても無理な時には自分が出るしかない。
朝10時に千葉の店を開けるには、山梨を5時過ぎの始発で出ないと
間に合わない。
家から駅まで歩くこと30分。
帰りがまたきつい。
9時に閉店して店をでるのが9時半頃。
当時新宿から山梨方面へは、10時の特急を逃すと0時少し前に出る
夜行の急行「アルプス」しかなかった。
結局これに乗って、住まいのある駅よりひとつ先の急行停車駅に着くのが午前2時。
運良くタクシーがあればいいのだが、無いときは悲惨だ。
ここから自宅まで歩いて約1時間半・・・
真っ暗な中、ひとりとぼとぼと山すそを歩いて行く。
これはほんとに悲しい。
なんでこんな寒くて真っ暗な中、歩かなきゃならないんだ。
誰にもぶつけようのない怒りが湧き上がってくる。
それでもやっぱり家に帰って、子供達の寝顔を見るとほっとする自分がいた。
そんな生活を続けていたある日。
子供達を連れて妻の実家に遊びに行くと、何やらテーブルの上に置いてある。
それは古いカメラだった。
ヤシカエレクトロ35.・・・そう書いてある。
こんなの使えるのかなぁ。
義父ももう久しく使っていないと言うので、借りてみることにした。
ボディは綺麗だし、一応作動もするみたいだ。
とりあえず、庭で焚き火をした時に、子供達の姿を撮ってみた。
ちょっと音は頼りないけど、ちゃんとシャッターもきれている。
数日後出来上がった写真を見てビックリ!
「う、美しい・・・」
焚き火を見つめる子供達。
その姿が浮き出るように捉えられている。
正直それまで写真を撮る事は少なかった。
職業柄、一日何百枚もの写真を見ているけど、あくまで人様の写真を見るのは仕事であり、普段の子供達の成長記録も全て妻にまかせていた。
そんな自分がこんなに感動的な写真を撮れるなんて・・・
そこからは一気に加速!
いろんな古いカメラを集めては撮り比べしてみる。
せっかくだから、集めたカメラを店に並べて飾っておいた。
するとたまたまそれを見たお客さんが、いろいろ尋ねてくる。
やがて売って欲しいという人まで現れるようになっていった。
こうなったら趣味と実益を兼ねるしかない。
古物商の資格を取り、本格的にカメラの勉強を始めた。
こうして今の店、「フォトノスタルジア」は産声を上げたのだった。
つづく
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