業界大手のDPEチェーン。
開発担当という若い女性は、連絡するとすぐに
飛んできた。
素敵なパンフレットと共に。
「ちょうど1月後に開店予定の店舗があるんですよ。
ここからですと20分位ですので、距離的にもいい
んじゃないでしょうか。」
まるであつらえたように出てきた物件。
来月開店予定の中堅スーパーのテナントとして出店
する予定だという。
今のコンビニから20分位。
充分通える距離だ。
「次にまた近くで出店出来るかわからないので、
ここはおすすめなんですけど・・・」
話はどんどん進み、2週間後には俺は名古屋の研修
センターにいた。
ここで5日間研修を受けて、ズブの素人が写真屋
さんになるのだ。
初日に聞いた社長の挨拶。
明日を担う若手経営者として、テレビ・雑誌などに
頻繁に取り上げられていた社長の鼻息は荒かった。
「皆さんはこれで成功への第1歩を踏み出しました。
当チェーンの目標は、2000年までに2000店舗
出店する事です。
皆さんと力を合わせて、成功の輪を拡げましょう!」
高揚する気分。
家に残してきた家族、そしてパートさんに任せてきた
コンビニの事を心配しながらも、5日間ひたすら
研修に励んだ。
研修が終わって、開店まであと1週間。
パートさんの募集、店舗の準備と、飛ぶように
時間は過ぎていく。
幸いうちのコンビニの向かいにある店のオーナーが、
開店前からいろいろ教えてくれたので、非常に
助かった。
開店直前のその日も、機会の操作について相談に
行った。
「とにかく判らない事ばかりで。
何かあったら、またお尋ねしてもいいですか?」
「あぁ。でもうちよりすぐ側に直営店があるでしょう?
あそこに聞けば、なんでも教えてくれるよ。」
「え? 直営店ですか?」
「ええっ、知らないの?
あなたが出す店のちょうど裏側に昔からやっている
直営店があるんだよ。
歩いて5分もかからないんじゃない。
担当から何も聞いてないの?」
歩いて5分の直営店・・・聞いてないよ・・・
今思えば、それがつまずきの第1歩だった。
つづく
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