「まあ、飯でも食おうよ!」
K社長のお誘いで、駅前の軽食屋へ。
食事をしながら、いろいろと店の事を聞く。
始めた頃はお客さんも来なくて、奥さんと
二人で店番をしていたこと。
まだ小さかった娘さんは、店の片隅でじっと
漫画を読んでいたこと・・・
店をやりながらもなかなか成果の上がらない
俺にとって、開店当初の苦労話と今まさに
飛躍しようとしているK社長の姿は、希望の
光そのものだった。
「自分がやりたいと思った店をやっていたら、
周りがついてきてくれた。」
「うちの店の運営は伝承芸みたいなもの。
バイトから社員になって店を作っていく。」
その言葉一つ一つに大きく頷く俺であった。
昼食のあとは、K社長自ら愛車のベンツを運転
して、あちこちの店鋪を案内してくれた。
ベンツと言っても、当時ですでに15年落ち位の
車で、水色に塗り直して乗っていた。
その車で店の手前まで行っては、我々を降ろす。
「俺が行くと、従業員が気にしちゃうからさ。」
なるほどなあ。
店を見学したあとは、事務所にお邪魔して実際に
出店するまでの流れを聞く。
郊外の住宅地に建つアメリカンな平家建て。
事務所には奥さんしかいなかった。
まだその頃は、店鋪数も30店位だったろうか。
とにかく在庫が多いので、出店するにはかなりの
資金が必要らしい。
半ばあきらめながらも、
「いつかは出店させて下さい!」
と告げて名古屋を後にした。
さて、帰ってからいろいろ考えた。
まず何からやるべきか・・・
今ある店はコンビニ1軒と写真屋1軒。
コンビニは売り上げは安定しているが、思った程
儲らないし、体もきつくなってきた。
写真屋はすぐ裏にある直営店のせいか、売り上げ
が伸び悩んでいる。
なんとかしなきゃいけない。
とにかく写真屋の直営店を閉めてもらおう。
さっそく本部と交渉するが、けんもほろろ。
逆に直営店の買取りを提案された。
まあそこそこ売り上げはあるので、悪い話じゃ
ないかも・・・
結局・・・買ってしまった。
と同時にコンビニを手放すことに。
たまたま後を引き継ぎたいと言う人がいたので、
スムーズに譲渡することが出来た。
ただ形としては中途解約になるので、本部との
話し合いには苦労した。
足掛け13年コンビニをやったけれど、結論とし
ては、フランチャイズっていいシステムだという
ことだった。
もちろん本部にとってだけど・・・
つづく
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