どうしても、女につかまりたくなかった。
たとえ、深夜の犬になろうとも。
パティスミスのような、女の子と一緒に暮らしていたことがある。
23歳くらいの頃。
池袋のワンルームマンションで。
その頃の、僕は学校を出たものの、就職とかはせずに、
完全なる、見事なまでの、THE 無職。
ジーザスクライスト 無職 スーパースター!!!^^
ってな、ありさまで、
音楽とか、表現とか、やってはいるんだけど、
どれもこれも、中途半端で、何にもなれない。
何にもなれずに、毎夜、酒を飲んで、
負けるのが決まっているのに、街でケンカをしていたりした。
彼女は仕事をしていて、
僕はようは、ひもなんだけど、
彼女からは、仕事、しなよ、
なんでもいいから、仕事しなよ、
と、毎日言われてた。
それで、そうだね、仕事しないとね、
と、僕も仕事を探すんだけど、
ほら、あれじゃない。
MIZUHOさんたら、ちょっと、頭おかしいじゃない(笑)
見つけてくる仕事と来たら、
デートクラブの勧誘とか、
アダルトビデオの制作だとか、
違法カジノのボーイとか、
そんな、どうしようもないものばっかりなわけ。
そして、自分でもその、どうしようもなさに、
耐え切れなくて、すぐ、やめちゃう。
そして、また、
ジーザスクライスト 無職 スーパースター!!!^^
アンド、ひもに逆もどり。
そんな生活のなか、
ある日、僕のバンドのライブがあったんだけど、
事件が起こるんだよね。
ライブが終わり、打ち上げに行ったんだけど、
見にきていた彼女こと、パティスミスの姿が見当たらない。
探すんだけど、見つからない。
そしたら、仲間がこう言うんだ。
お前の彼女、見知らぬ男と、出て行ったぜ。
急いで、仲間が指差すほうに、走っていってみると、
遠くに、彼女と、見知らぬ男の後ろ姿が。
なんか知らないけど、むしょうに、腹がたって、
酒も入っていたのもあるし、
その男の背中に、いきなり、とび蹴りをくらわしたんだよね。
で、そこからは、乱闘になった。
ひどい、乱闘になった。
しばらくして、
ちょっと、落ち着いて、彼女に行こう、と言うと、
彼女は、行かない。
って言うんだよね。
下を向いて、
あなたが、このままなんだったら、行かない。
って。
なんか、こう、その言葉には、すべてがある気がしたんだよね。
その夜を境に、彼女とはお別れ。
2度と会ってない。
でも、今でも覚えているんだけど、
本当は、あの時、
こう言いたかったんだよね、
心の底から愛してる、
仕事もちゃんとする、
だから、僕と結婚しよう。
でも、言えなかった。
どうしても、言えなかった。
なにか、こう、人生の全てが、そこで決まってしまう気がして、
怖くて、怖くて、どうしても言えなかった。
どうしても、その頃の僕は、女の人につかまりたくなかった。
女の人と一緒に生きていくということが、どうしても幸福なものに思えなかった。
そして、全力で逃げた。
深夜の犬のように、暗いなかを、
わーーーーーーって、叫びながら、一目散に逃げた。
だから、今でも、あの夜のことを思うと、
僕の心は、瞬時に、深夜の犬のような気持ちになるんだよね。
彼女は、今、
どこで、
どんな空を見上げているんだろう。
>>UNDER
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