午後11時59分と、午前零時の隙間のような、高校球児（外野手）の追う白球が柵を越える瞬間のような、荒野に、咆哮する寸前のライオンが口を開けた時のような、7月の雨が上がる午後6時過ぎのような、グラビアアイドルの水着と、脚の付け根の境い目のような、眉間に、皺を寄せる前に一呼吸入れるジョン・トラボルタのような、土管に、入る寸前に身を屈めるマリオのような、入れていい？と聞いてから入れる直前の直立したペニスのような、いいよ、と答えながら目を反らすビッチのような、飛ぶことを諦めてしまったジョナサンのような、Gから、Dに移動するため弦の上を滑る指先のような、親指を立てて、1日に3台しか車が通らないような場所でそれを待つハイカー,ジャック・ケルアックのような、リングの上の拳闘士に自分を重ねて息を切らす寺山修司の立てられた襟のような、ポルノ女優の小股にモザイクを掛ける職人の右手に握られたマウスの軌道のような、くじらの腹の中で息子に出逢えたゼペットじいさんの微笑みのような、下剋、上を狙う足軽が握る槍先に反射する太陽のような、先の、先の、先の、先を読むプロ棋士の勘ぐりのような、遠のく、意識の果てでスリーカウントを聞いたマイク・ベルナルドのヨダレのような、初めて出来た彼氏に自室の窓際でマフラーを縫う処女のような、そんなこと、知らない少年（14歳）のベッドの下に隠されたエロ本のような、甲州街道の脇で錆びたアルミ缶を拾う乞食の引くリヤカーの車輪のような、トーデンに隠ぺいされた真実を唄うフォークシンガーの枯れた声のような、群れから逸れてしまった獅子座流星群の屑星のような、甘い、甘い、冷めたホットミルクのような、ボルヘスが、空想し創造する小説の中の架空国家のような、痴漢冤罪で、刑務所に閉じ込められた（ハメられた）ニュースキャスターのような、夜明けまで、踊り続けるネジの壊れたダンサーが履き潰したアディダス（stan smith）のような、ゴッホの描く、タンギー爺さんの背中に飾られた浮世絵のような、宇宙の孤独から、解き放たれたばかりの生まれたての赤子のような、誰かと手を繋ぎたくなるような冬が、

この街にも訪れた。

12年ぶりに故郷で迎えた冬、年々、この季節が好きになり、小踊る俺。