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Desigin : OFFICE ROAR


パリ、鹿児島、テキサス


◇◇◇


Vol.3 無口な農家(アイツ)が言ったのさ






311以降、「農フューチャー農ライフ」というのは僕の中の幾つかの重要なテーマの一つとして、意識の片隅にべったりと張り付いている。

夏が終わり、蝉の声も途絶えて、朝夕肌を刺す風が吹き始める頃、この街の男たちはみな農家になる。

時代の経過と共に幾らか色褪せはしたものの


「この時期の鹿児島は、運動会と稲刈りで人が居ないから期待するな」



というのが商売人の間では常識となっている。らしい。それほど、


田舎での暮らしは農業との結び付きが強い。


まあ、それは鹿児島に限らず都市部以外の地域では当たり前のことか、農業大国ニッポンだもの。

とはいえ、長年、その都市部でのんのんと暮らしていた自分のような軟弱者かつ軟派野郎のおぼっちゃんにとって“大人になって初めての稲刈り”というのは大変興味深く、楽しみであった。





ちなみに今、住んでいるところから地元までは電車に揺られて1時間程度。

前の晩に母親から「8時には始めるからね!」と言われ「うんちゃ!」と返事をしたものの、起きたら10時。

ぬへへ、と力無く笑った後で時刻表をチェックして10時40分の電車に間に合わせて地元へ向かい11時半に到着。駅まで迎えに来てくれた母親に「バカ」と言われる。

田んぼに到着。だいたい3分の1ほどが既に稲刈られており、ぬへへ。





今まで色んな漫画や映画を観てきたおかげでこういう場合の身のこなし方はだいたいわかっている、基本的には「習うより、盗め」なのだ。

いちいちアレコレ聞いて回り作業者の手を止め足を止め「教えて教えて教えてくれよぉ〜」などと馬鹿丸出しでソレを乞うよりも状況を見ながら現状を把握して、自分に出来そうなことをしている人の「技」を盗むことが大切なのだ。

どうやら男衆は“刈った稲を乾かすために掛ける足”を作り、女衆がそれに稲を掛けている模様。




おし、じゃあ俺も“足”を作るか!と、勢い良くシャツの袖を捲くったところで一族の長から「いや、お前は稲を掛けてくれ」と言われて。

ちょっ、それ女衆の仕事じゃーん!と思いながら、まあいいや「うんちゃ!」と元気良く返事して稲を掛ける作業にせっせと従事した。

(後から聞いた話、足作りにも絶妙なコツや按配があるらしく、それが出来ていないと稲を掛けた後で崩壊する場合もあるとのこと)





この日は、総勢10人近くの人手もあり、機械を使わずにわいわいと賑やかに“一族らしく”絶妙なチームワークで作業をこなし、途中、川を挟んだ向かい側に大きなイノシシがぬらっと現れて場が騒然とする場面を挟みつつも、よくある風景。

掛け終えた稲が乾くまでの間に切り痕に雨や朝露などが入らないように上からビニールを掛ければ日暮れと共にお終い。




婆さんが終盤、独り言のように呟いていた言葉がとても印象に残った。


「昔はこうやってみんなで一緒になってやっていたのに、最近じゃ機械が入ってアっという間に終わってしまう・・・

便利になったのはいいけど、農作業も、家族の大切なコミュニケーションの一つだったんだけどねえ」




暮らしにかかる負担や、作業時間短縮の為に開発された“夢の”農業マシーンが結果として人と人のコミュニケーションの喪失を招くというタチの悪いこのザマ。

“利便”や“快適”だけを貪欲に追及した末に置いてあった不幸せや不条理は、すでに表面化されていて誰でも一度は考えたことがあると思う。

つまり、ここで考えるべきは軽減した“負担”や短縮された“時間”を僕らはどう使っているか、その“ゆとり”を本当に生産的に使えていれば、結果として「コミュニケーションの喪失だった」という“ネガティブ”が目立つことにはならなかったのでは?

そしてそれは当然、農業マシーンだけに留まらず僕らの生活のほとんどに当て代えて考えることも出来る。

昨今の日本で「狩る」といえば「モンスター」を指すという笑えない日常を送っているが、僕の暮らしの中で生まれるその“ゆとり”を、敢えて農業に還すというこの行為に本末転倒感を抱きつつ農FUTURE,農LIFE.


PSPごとモンハンを部屋の隅に投げ捨てて田を目指した俺に農の女神よ微笑め。


以上、南の端・鹿児島より古本屋のはしくれBooksSmile&CDs店主・山下がお届けしました、ご愛読、感謝。






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山下 誠一朗 酉年 鹿児島在住

BOOKS SMILE & CDs 店主
@ GOOD NEIGHBORs

好きな映画「パリ・テキサス」「ランブル・フィッシュ」「ブラック・スネーク・モーン」
好きな作家「宮沢賢治」
「久生十蘭」「ホルヘ・ルイス・ボルヘス」「向井豊昭」「町田康」

嫌いな物語「アリとキリギリス」「ウサギと亀

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