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絵:IMPOR デザイン:REF.masaya


Vol3 どす曇りの空から涙が降りそそぐ




マサヤがいなくなる・・・。


マサヤと離れ離れになるなんて考えてもいなかった。
4年生の途中なのに・・・。


「何で・・・?」


「お父さんの仕事の都合で、旭川へ引っ越しをすることになったんだって」と母は言った。


旭川という町は、富良野から車で1時間ほど離れた町。


車で1時間・・・。


小学4年生の俺にとっては途方もない距離に思えた。
離れ離れになったら、次、いつ会えるかもわからない。
移動手段が徒歩か自転車では、辿り着くことができない町。
遠い、遠い町。


母との話が終わり、何も考えることができないまま、
おもむろに立ち上がって、ふと窓の外を眺めた。

いつもマサヤと遊んでいた小さな公園は、夕陽でオレンジ色になっていた。
公園で遊んでいる二人の影は、マサヤと弟のコーキだった。

何事もなかったかのように、
転校することが嘘みたいに、
マサヤとコーキは楽しそうに遊んでいた。


マサヤ・・・。


俺は自分の部屋に行き、勉強机から、ゆっくりと椅子を引っ張り出した。
かくれんぼをするかのように机の下に体を入れる。
そして、膝を抱え、うずくまった。


マサヤがいなくなる・・・。


マサヤがいなくなるなんて、嫌だ・・・。


嫌だ・・・。


涙は、次から次に溢れてくる。


何度も、何度も腕で拭った。

* * *

マサヤが引っ越しをする日は、
見送る人達の気持ちを映し出すかのように、
重たい雲が空を覆った。

マサヤの家族が乗る車には近所の人たちが、
「また遊びに来てね」、「元気でね」と次々に声をかけていた。
そんな光景を眺めている俺に、「マサヤくんにお別れを言ってきなさい」と母が言った。

ゆっくりとマサヤが乗る後部座席に近づいた。
マサヤは、いつになく真剣なまなざしで俺を見た。
おそらく俺も。


「手紙、書くね・・・」そう言うのが精一杯だった。


「・・・俺も書くよ」静かな声でマサヤが言った。


後部座席の窓が、ゆっくりと閉まった。
マサヤを乗せた車は、ゆっくりと動き出す。
見送る人達は、車に向かって大きく手を振った。


どす曇りの空から、涙がふりそそぐ。


俺は、車が見えなくなるまで、
ずっと、その場に立ちつくした。


─── マサヤ・・・。いっぱい手紙書くからね。

─── マサヤ・・・。また、会おうな。


─── マサヤ・・・。

─── 俺達は、一生、友達だ。



パンダちゃん。

名乗る場面もないのにつけた、俺とマサヤのコンビ名。

あれから20数年の月日が流れた。


小学生だった俺達は、
何かするでもなく、
ただ、コンビ名があったら良いなと思ってつけたけれど、
もしかしたら、30代の今、この時のために、
パンダちゃんというコンビ名をつけたのかもしれない。
あることを、ぶちかますために。

これから綴る物語は、
少年から大人になった俺達、パンダちゃんの物語だ。




つづく




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■著者プロフィール

名前:楽雲庵塾塾長

出身:北海道

好きな食べ物: ラーメン
好きな飲み物:アイスコーヒー、コーラ
好きなスポーツ:野球
好きなキン肉マン超人:キン肉マンソルジャー

WEB:

楽雲庵塾  http://www15.ocn.ne.jp/~rakuunan/

pandachan http://pandachanjapan.blogspot.com/

 







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