私の夫は歯医者さんが嫌いだ。
どのくらい嫌いかは前回の記事を一読していただきたい。
彼が「歯が痛い」と言い出して約1カ月。
先日、ついに堪忍袋の緒が切れた。
脳内で「ブチッ!!」と音がしたと同時に、
「歯医者に行くか、離婚するか、どちらか選んで!」と告げた。
歯が痛いという苦痛を味わっているのは、もちろん私ではない。
何かと病弱な私だが歯だけはめっぽう丈夫で、
この31年間、酷い歯痛というものを体験したことがない。
それゆえ、歯痛の苦しみが理解できずにいる。
が、しかし、夫婦というものは難儀なもので、
病めるときも健やかなるときも共に過ごさねばならない。
毎日毎日、歯痛爆弾を抱えた夫と一緒に過ごせば、
その歯痛爆弾とやらが、負のオーラとなり、
知らぬ間にこちらにも鬱々としたものがのしかかってくるのである。
「歯が痛いの?」
「歯医者さんに行かなくていいの?」
この1カ月間、隣りにいる夫にやさしく尋ね続けた。
あくまでも“や・さ・し・く”、である。
早いもので、私たち夫婦も出会って5年目。
顔を見ればいつもと様子が違うことなど一目瞭然である。
彼が痛そうにしていれば、心配になって声をかけるのも当然のこと。
しかしながら、夫は歯医者さん恐怖症ゆえ、
「大丈夫、大丈夫」を繰り返し、一向に治療しようとはしなかった。
本当に大丈夫ならこちらも構わぬのだが、
実際は時折、猛烈な痛みが襲ってくるらしいのだ。
そうなると大変である。
何がそんなに大変かと言うと…
「よっちゃん、俺、歯が痛くてお茶碗洗えない」(当番なのに!)
「あ、歯が痛くて○○買ってくるの忘れた」(何度も頼んだ!)
「歯が痛いからお腹も痛い」(腸が弱いだけ!)
「ねぇ、歯が痛いから10分黙ってて」(何様っ!?)
もうこんなことは日常茶飯事で、
こちらも憎むべきが一体何なのかわからなくなる始末である。
また、ある日、
仕事帰りに歯医者さんに寄ると言って出かけたため、
ようやく歯痛爆弾の負のオーラから解放されると思いつつ家で待っていた。
すると帰宅するやいなや「歯医者、全部休みだったわ」と言い放つ…。
そんなわけがないのだ。
職場から自宅までは市街地を通過するのだから、
その間にいくつ歯医者さんがあると思っているのか。
もう空いた口が塞がらないとはこのことだ。
さらに、普段は風邪で熱が出ても
「俺、自然治癒力を大事にしてるから」と薬など一切飲まない夫だが、
歯痛のときは市販の鎮痛剤をフリスク感覚でポイポイ口にする。
止めるように言ったところで、その返事は「だって痛いんだもん」。
もう大きな子どもだと思って諦めるほかない。
夫が歯痛を訴え始めてから半月が経ったころ、
「夫が歯医者さんに行かなくて困っている」旨を
Facebookに記したことがある。
そんなこととはつゆ知らず、夫は帰宅すると軽いパニックを起こしたように、
「よっちゃん、ついに街中のみんなが歯医者に行けと言い出したよ!」
と繰り返した。(ありがとう、鹿児島のみなさん!)
そんな日々が約1カ月続き、
ついに私の我慢も限界に達して冒頭のセリフを放つに至った。
「歯医者に行くか、離婚するか、どちらか選んで!」
たかが歯痛、されど歯痛。
私たち夫婦にとっては離婚問題に発展しかねないのが歯痛である。
休日、怯える夫を連れて歯医者さんに出かけた。
子どもの治療を主に行っている無痛治療で有名な歯医者さんだ。
ちなみに、待合室で異常に怯える夫がこちら↓
2時間にもおよぶ治療により、
ボロボロになった親知らずはようやく抜かれた。
当然、その日は食事をとることもままならない。
その夜、麻酔が切れて頬を押さえている夫のために、
柔らかなリゾットを作ったが、
結局夫はそれを食べることなく寝てしまった。
翌朝起きると、お鍋の横に一枚のメモが置かれていた。
メモを見て心底やれやれと思う。
だが、気を抜くのはまだ早い。
夫は痛みがなくなると完治する前にも関わらず、
途中で歯医者さんへ行かなくなるのだ。
前回は私もただの彼女だったが、今は妻。
今回ばかりは最後まで通ってもらいます!
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