最後に、鹿児島へ結婚の挨拶に来たときのことである。
彼の故郷、薩摩川内市は、街のメインストリートがシャッター商店街というなんともさびれた街。(所謂、過疎化の街である)
それゆえに夜になると辺りは人通りもなく、特に彼の家の周辺は街灯もないため、漆黒の闇に包まれる。家から一歩外に出れば、暗闇に目が慣れるまでなかなか辺りを見渡すことができないほど。
しかし、その暗闇と反比例するように、空に目をやるとそこには満天の星空がどこまでも広がる。
家族や親戚への挨拶を済ませ、宴もたけなわになった頃、彼は私のために庭にせっせと敷物を準備して寝転がるように言った。
ゴロンとそこに寝転がると、目の前に延々と広がる夜空はさながらプラネタリウムだ。
そして、彼は私の隣に来ると北斗七星やオリオン座など、空に散りばめられた星座をこと細かに教えてくれた。
当時、東京で日々時間に追われ、日常に困窮していた私にとって、この上ない非日常の空間であった。
ああ、なんてロマンチック!
いつも私の右隣にいる彼は、今は旦那さんになったわけだが、それはもう左足の裏みたいな顔だけれど、完全なるロマンチック原理主義者。
何がどうなってそんなにロマンチストになったのか、結婚した今もなお不明だが、私が出逢った誰よりも大雑把で繊細なロマンチストなのだ。
かと言って、特にロマンチックな言葉を囁くわけではないのだけれど。
女友達に話せば「いいな?ロマンチック?」なんてうっとりする。だが、彼は左足の裏みたいな顔だということだけは二度書いておく。
この凄まじいギャップは一体何なんだろうか。それだけは結婚した今もなお謎なのである。
いつか私たちに男の子でも生まれることがあれば、きっとそりゃあロマンチック原理主義者に育つのだろうと想像し、ニヤニヤしてしまう今日このごろ。
2012年5月6日、彼と私の結婚生活もドタバタながらに一年間が経った。
さて、そろそろ三人目のロマンチックなチームメイトを迎え入れる準備でも始めようか。
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