愛するがゆえ、飛び蹴りくらわす
恋愛、そして結婚と自由。
私の好きな人が私を好きできてくれること、
私の好きな人が私と結婚してくれたこと、
これって真面目に奇跡なんじゃないかなって思う。
そんな私の恋愛と結婚についてお届け!
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Vol.2 100通のメールを送る男
人生において3回あるというモテ期。
26歳の終わりに哀しい別れを経験した私だったが、
27歳にしてついに来たのが、いわゆるモテ期だった。
平日は編集者として男勝りに働きながら、
休日はデートの約束で次々に埋まっていった。
「今度、一緒に映画を観に行こう」
「夜景の素敵なレストランを予約したよ
そんなお誘いでケータイの受信フォルダがいっぱいだった。
そんな中、私は立て続けにふたりの男性と出会う。
ひとりは35歳のウェブデザイナー。
すらりと背が高く、無造作に見えて清潔感のある長髪、
ファッションもしぐさもスマートな大人のイケメンだ。
もうひとりは27歳、私と同じ歳でこちらもデザイナー。
下北沢の一軒家で友達と5人暮らしをしているという。
初デートは渋谷のお好み焼き屋さんで、まさかの割り勘。
ただ、私の質問や何気ない会話の返答が予想の斜め遥か上を行き、
興味や好奇心を掻き立てられた。
彼は私が今までに出会ったことのないタイプで、
一緒に居るとそれだけで心が弾んだ。
ある日、このふたりの男性から同時に誘われる。
35歳のイケメンとは以前の会話の中で、
当時話題の『レッドクリフ』を観に行こうと約束していたのだった。
そこに、27歳の彼からの突然のお誘い。
私は迷うことなく、イケメンとのデートを“風邪気味だから”と断り、
後者の彼とのデートを選んだ。
この選択をしたことで、
この先、二度とイケメンとは会うことはない、そう思った。
私はイケメンではなく、27歳の彼を選んだのだ。
そしてデート当日、彼から一通のメールが来た。
「今日のデートやめにしない?」
私は突然のメールに意味がわからず、すぐさま電話をかけた。
すると、彼は言う。
「だって雨降ってるじゃん?」
――雨。
それが私とのデートを断る理由。
私は一大決心であなたを選んだというのに、
“雨が降っている”というだけで約束を断るなんて!と腹が立った。
さらに彼は続ける。
「俺、雨の日は仕事とTSUTAYAしか行かないんだよね」
まったくもって信じられない!
私は彼に会いたい一心で、本当はイケメンから映画デートに誘われていたこと、
それを風邪気味だと断ったこと、そしたらイケメンから
「宅配ピザでもとってウチでDVDでも観る?」と誘われたこと、
そのすべてを話した。
それでも彼は、「君のことは好きだけど、雨だからね。
その“ピザ男”と映画行けばいいじゃん?
と言い放った。
私も意地になって「じゃあ“ピザ男”と映画行くよ?
けど、私のことが好きなら私の好きなところ100個メールしてよね!」と伝えた。
そう言えば「わかった。んじゃ今から行くよ」となるものだと思った。
ところが、私の意に反して彼は「いいよ。100個ね」とどこ吹く風だった。
もはや“ピザ男”と化したイケメンに、
申し訳なさを抱きつつも、一緒に映画を観に出かけた。
映画が終わり、レストランで食事をしていると、
マナーモードに設定しているケータイがブーブーと鳴る。
彼からのメールだった。
「1:顔が丸いところ」
「2:よく笑うところ」
「3:しっかりしてそうでドジなところ」
まさか、本当に”100通のメール”が始まるとは思わなかった、
加えて「好きなところもっとあるでしょ?」と言いたくなるような内容。
けれどケータイはひっきりなしに鳴り続け、食事どころではなくなってしまう。
私はこのとき既にピザ男の話など上の空。
ピザ男からも「ケータイ鳴りっぱなしだけど大丈夫?」と気遣われる始末。
しまいにはお手洗いに立ち、ケータイをチェック。
「79:おいピザ男、おまえの出る幕はない」
「80:つーか、こんな雨の日に100通もメールを送るのは東京中探しても俺だけだと思う」
「81:でも、今もピザ男とご飯食べてると思うと実際なんかヘコむ」
だんだんと私の好きなところとは無関係になっている100通のメール。
それでも私はうれしくて、ピザ男を残し、レストランをあとにした。
外に出ると雨は止み、そこにはいつもの東京の風景があった。
結局、なんだかんだ送られてきた100通のメール。
先にも後にもたった一度きりだけれど、
あれから3年が経ち、鹿児島で結婚した今も彼は私を驚かせ、笑わせてくれる。
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>>はじめまして。良美です。
ちょっと変な旦那さんをもつフリーライター。
FSL02では、私なりの視点で恋愛や結婚について綴っていけたらと思っています。
どうぞよろしくお願いします。
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