Vol.1 隕石に導かれた男

「隕石買った！」


2年前の夏、仕事をしているとデスクの上の携帯電話が鳴った。

当時付き合っていた彼氏からだった。

仕事中に彼から電話がくることはめったになかったため、

私は携帯電話を手にしてデスクを離れる。

すると、いつもよりいくらかテンションの高い彼が言ったのが冒頭のセリフだ。

状況がまったくつかめない私に、彼は饒舌に続ける。




「いやあ、新宿をチャリで走ってたらおもろい店があったんだ。

そこで店主のおっちゃんと話してたら盛り上がっちゃって！　

おっちゃんが“君は隕石に導かれた性質（たち）だね。

君は隕石を買ったほうがいい”って言うから買ったのよ、隕石。

千円から数億円まであるっていうから、とりあえず千円の。今度見せたげるねー」

彼は矢継ぎ早にここまで話すと電話を切った。

後日見せられた隕石なるものは小指の先ほどの大きさで、どう見てもただの鉛の塊であった。

今年5月、私は“隕石”を持つこの人と結婚した。

>>はじめまして。良美です。 ちょっと変な旦那さんをもつフリーライター。 FSL02では、私なりの視点で恋愛や結婚について綴っていけたらと思っています。 どうぞよろしくお願いします。

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