第二回 いきなり転倒事件 in 北海道(前編)
そんなこんなで北海道から帰ってから教習所に通い、自動二輪免許を取ったつまこ。
実際に自分のバイクを買ったのは翌年の春だった。
その時はまだ大型免許は持っていなかったし、カワサキの250TRというレトロな
オフロードバイクという感じのバイクに乗るようになった。
タンデムで走り回っていた楽しみ方から、ふたりでオートバイを走らせる
新しいオートバイ・ライフが始まったのだ。
そして次の夏、今度はタンデムではなく一人一台ずつバイクに乗って北海道ツーリングへ!
ふたりで眠れる少し大きいテントやキャンプ道具を買い足し準備万端、またしても八戸まで
高速を飛ばす…ことになったのだが、ちょうどタイミング悪く台風が来ていて。
予定のフェリーが欠航になったことを知りつつ、とりあえず夜通し東北道を走った。
つまこは初心者なのに、なかなか過酷な経験をさせてしまった(笑)。
フェリー再開を待つために八戸で一泊。翌日はよく晴れ、フェリー会社の人が言うには
青森港から函館行きの船が出そうだということで、それを狙って青森へ移動した。
前日は雨の中を走っていたので、晴れがうれしかった。
青森港ではしばらくのキャンセル待ち後、無事に函館行きのフェリーに乗ることができた。
サラッと書いたけど、家を出てからここまでで既にけっこうな道のり。
北海道に渡れないことはないだろうと思っていたし、ここまでの長距離走行が初めての
つまこのことも心配だったが、無事にフェリーに乗れてホッとした。
帰りのフェリーは予約してあるし、渡ってしまえばあとは旅を楽しむだけだから。
ところが約4時間弱の船旅を経て降り立った函館では、雨が降っていた。
カッパを着込んで走り出す。今考えてみれば、普通にスタートしたつもりではあったんだけど
ようやく北海道に上陸できた気のゆるみと、前日の疲れなどもあったのかもしれない。
港を出てしばらく経って片側二車線の国道を走っていた時、ちょっと長めのトンネルに入った。
地図によると、このトンネルの出口すぐの信号で右折する予定だったので、右車線に移動。
後ろを走っているつまこの様子をミラーで確認して、視線を前に戻したとき。
思いのほかトンネルの出口が近くに見え、信号待ちの車のブレーキランプが視界に飛び込んできた!
びっくりした僕は思わず強めにブレーキをかけてしまった…濡れた路面での急ブレーキが禁物なのは
誰もが知っている常識である。
時速50kmからの急なブレーキングに驚いた後輪はズルズルと左右にふれ、バランスを失う。
迫る車列のブレーキランプ。
「やばい!!!」わがスポーツスターは横倒しになり、自分もひっくり返る。
バイクの前に投げ出されて路面を滑りながら、後ろからバイクがのしかかって来たら…という恐怖と
前に停車している車に突っ込んだら…というダブルの恐怖!!
幸い車に激突することも自分のバイクにのしかかられることもなく、路上に仰向けの状態で止まった…。
気がつくとすぐ後ろで、つまこと250TRも倒れていた。
「大丈夫!?」とりあえず自分のことより、初めてコケたつまこが心配だ。
「止まれたんだけど、びっくりして転んだ」とのこと。ほとんど止まってから倒れたらしい。
自分のバイクはというと、フロントを進行方向と逆に向けて倒れている。
二人で起こそうとしたら荷物満載のせいで激しく重い!!
難義していたら通りがかりのツーリングライダーが手伝ってくれて、ようやく起こせた。
旅先でのライダー同士の助け合いは素晴らしい。本当に感謝。
苦労して路肩にバイクを移動して状況を確認すると、つまこは人・バイクともに無事。
カッパの膝が破れた程度。
僕の方はといえば、バイクは左のハンドルが手前に曲がっている。身体は左手首が痛い。
バイクは大荷物、人は革ジャン+カッパの厚着で、大事に至らなかったらしい。
とはいえ痛む左手でひん曲がったハンドルのクラッチレバーを握り、運転を続けるのは無理だ…
ぼうぜんとしつつも、とりあえず函館の街に戻りどこかバイク屋と医者に行くことに決めた。
バイクの先輩でもあり旅を引っぱっていく役割のはずの自分が北海道に上陸後、
1時間もせずにこの事態に陥ってしまった北海道ツーリング、一体どうなるのか…!?
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