息子に
かくも容赦なくのっぴきならずひとであることの
あけてもくれてもひとでありつづけることの
そのむごたらしさのまんなかをこそ
おまえは生きよまっすぐに
おまえはねがうな野の花のやすらかさを
ひたすらにあるがままに身をゆだねてつつましく
みちたりてもだえないことをうらやむな
おまえはいつもうえつづけほしがりつづけ
みちたりなさのなかでめぐりあいに生きよ
おまえは閉ざすな
窓という窓戸口という戸口を
そこからとびこんでくる一切のものにめぐりあえるように
小さな一匹のコガネムシとさえ
おまえはめぐりあえ こころのありったけで
汚辱や悪意不運や挫折をこわがるな
めぐりあいのなかでおののきながら
こころは深くなり大きくなるのだ
ああ おまえは生きよ
かくも苛烈なひとのよにおまえをうんだ
わたしのうしろめたさをふみしだいて
ひとであることのまがまがしさをつきぬけて
しんそこいのちのいとおしさにたどりつける日まで
征矢泰子 -ソウ・ヤスコ-
詩人
1934-1992
現代詩文庫「征矢泰子詩集」(思潮社)より
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これはお亡くなりになった詩人、征矢泰子さんの作品です。
僕自身、征矢泰子さんについてさほど明るくないのですが、この詩にだけはいつも、深く感じいります。
奥田民生の曲に"息子”という名曲がありますが、それとたいそう似た感動をおぼえます。
この詩では言い切っています。
この世はろくなもんじゃないと。
僕もそう思う。
だけどそれでも力強く。
たくましく。
汚辱にまみれながらも生き抜いて欲しい。
それが親の、それが母親の、そして母なる地球からのメッセージであると言ったら言いすぎでしょうか。
自由型のものよ。
一切閉ざさずに、こころのありったけでめぐりあえ!
征さん、素晴らしいメッセージを残していただいてたことに本当に感謝します。
<フリースタイルライフ編集 MIZK>
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