古谷 実 (著)

出版社: 講談社 (2003/12/25)

古谷実作品はグリーンヒルから目が離せなくてずっと読んでる。今回のこのシガテラでは人生のマイノリティー側に回った人間がまあ持つであろう”自分はきっと幸せにはなれない”という考えと青春という一種、漫画というエンターテイメントにしがたい部分を見事に作品化していて凄いと思う。

”（どうしてだかわからないけど）自分は（本能的に）幸せにはなれない。”という思いを抱いて大人になってしまった人って意外と多いと思う。かくいう僕もまさにその一人だったんだけど、いつしかその時期は越えた。

この物語の主人公もまさにそれで本能的に自分は人を不幸にするかも知れないという呪詛に縛られている。そしてその呪詛を軸に様々な陰惨な事柄が起こってゆく。

最初、この漫画を見た時はそれはもう、怖くて怖くてしばらく見るのも嫌でずっと避けていた。それは高校生の時に手に取った太宰治の人間失格を手に取った時に凄く似ている。でもまあ、いつまでも逃げ回るわけにもいかないと思って読んでみた。

結果。まあ、よかった。

絶賛の嵐、感謝感激あめアラレとはいかないんだけど、それぞれの登場人物が、誰を恨むわけでもなく、それぞれの自分の人生の幸運と不幸とに折り合いをつけていてそこに勇気を感じた。

古谷実作品に共通することだけど、幸福と不幸のスレスレ感というか、この世界がいかに砂上の楼閣かと改めて思わされる。

何も感じない人には何も感じない作品かも知れないけど、感じる人には強烈な作品だと思う（あたり前か）

まあ、とにかく、昨今、巷にあふれるアホ専用の恋愛小説とかそんなものよりも数千倍文学的だし、（一部の）漫画が完全に文学作品を追い抜いているよなと思える作品。

今宵、どうぞ。

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