よりによって、という言葉がさっきから私の頭の中で回り続けている。
そうなのだ。私が途方に暮れたのも、無理はなかった。
2分の1?いいえ、今回に限って3分の1だったのだ。遺伝子の確率が。
しかも珍しく自分的にも心底不本意なカウントで、ひどく傷ついた日だった。
本当にたまたま、どういうわけか今回に限って。
だから困ってる。アルジとコイビトだけなら、こんなに問題ではなかった。
なぜなら私はコイビトと、アルジ公認で付き合っていたから。
コイビトの前で唸りながら、とりあえず一生懸命、振り返ってみる。
まず14日にそれがあり、15日にアルジになぐさめてもらって、
コイビトとはその後、14日のそれのことで口論になり、半ば投げやりにしたんだった。
そうだ。可能性としてはアルジとのときが一番怪しい。
でも傷心の身だったから、私にしてはひどく記憶が曖昧だ。
だがそこが最も肝心な部分なので、確認のためにもアルジに電話をした。
「あの日は中で出したよね?その後、私、洗ったっけ?
たしかその日は朝から遊園地に行く予定だったのに私がうだうだしててあなたに叱られて、
そのまま服着て出たんじゃなかったっけ?よく思い出して!」
話せば話すほど記憶がよみがえってくる。そうだ、そう。
しかもなんだかいっそうアルジとの子であることが濃く感じられてきた。
実は私はあのゴム製の避妊具が体質的に苦手で、ほとんど使わない。
生理の周期がおそろしく正確なのをいいことに、
「危ない日はしない」「普段は外に出して、よく洗う」「安全なら何も気にしない」
という独自の方法をとっていた。もちろん、それでは避妊にならないことを知った上で。
でもそれは、少なからずとも自分の中では孕む覚悟をしていたから。
たとえ一瞬でも自分が愛した人との間に授かった命なら、形式はどうあれ責任は取る。
そういうつもりで毎回望んでいるからだったのだ。私なりに。
14日のそれのときは使わなかったんじゃない、使わせてもらえなかったんだ。
だから普段の私の避妊法しかできなかった。
そんな意味でも、かさねがさね不本意だった。
そして、ショックで自暴自棄になっていた私は数日、避妊するのをやめてしまった。
あとから考えればその週が、ちょうど排卵付近だったという。
狙ったかのように、まんまとね。
気づくとコイビトが横で苦笑いしていた。
「いいけど中だの出すだのって、下品すぎだから」
アルジにそう言われたと伝えると、
「ほんとだよ!」と間髪入れずに返されてしまった。
・・・つづく
楠本 真夕 (くすもと まゆう)
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