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>>2006-7-22 START!!

一流大学→一流企業→AV男優→プー太郎…そして47カ国回った旅…そんな雑魚ゾンビの生き様。
女にモテず、仕事もロクにできない男たちへ、馬鹿に自由に生きるすばらしさを伝えたい!!

雑魚ゾンビ(ザコゾンビ)〜プロフィール〜


1979年生まれ。慶応義塾大学卒業。一流企業に就職するも、10ヶ月でドロップアウト。

以後、テレビAD、バーテンダー、AV男優、派遣社員など、30種近くの仕事を経験。暇をもてあまし、人間モルモットで稼いだ金で訪れた国は47カ国。現在、週休三日のサラリーマンをしながら、妄想の日々。

>>BACK NUMBER
第一回  〜2002年新卒の夏〜
 

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さらばガリ勉の日々よ 第2回

〜540円の自分探し〜

    
自分探しの旅なんて540円もあればできる。

540円。
タバコとライター、歯ブラシ一本で、世界の果てまでどこまでも・・・?


そんな、カッコいいことは言わんよ。

僕にとってその内訳は、履歴書一枚と、自宅から
アダルトビデオ制作会社のある代官山までの、
交通費だった。

当時、僕は哀愁の町、蒲田でバーテンダーを
していた。
バーテンといっても名ばかりで、僕の主な
仕事はロック用のアイスを丸く削ること。
そして、皿洗いと野菜サラダの盛り付け。

「酒は指で混ぜるもの」
と本気で思い込んでる
上機嫌の酔っ払いには、水割りくらいは
出していたけど、見習い二ヶ月のバーテン
なんて所詮そんなもの。


男の憧れでもあるこの職は、想像以上に
女にモテる。

当然僕もそれに便乗したいとこだったが、
仕事帰りに、好みの女性と立ち食いそばを
食うのが精一杯だった。


自給900円の職場で、わずかな貯金を食いつぶしての
フリーター生活。
本気で働けば、それなりに食べていけたんだろうけど、
元々コリ性でもない僕は、入店三日目にして
「酒なんかビールだけでいいよー」と実感。
それなりの仕事ぶり。
それなりに楽しい生活。
だったのだ。


そんな僕が、その頃毎日血眼になって見ていた
求人サイトで、ある職業を発見する。

「AV監督になりませんか?最短入社一年でなれます!」

とかく、クリエイティブの響きに憧れ、検索する職種も
クリエイティブのみ。
「クリエイティブ病」という難病に冒されていた僕。
大半が、求人広告の制作などの味気ないものだったが、
AV監督の4文字は、そんな中で一際輝いていた。



元々僕は映画監督志望で、学生時代は自主映画なども
作っていた。

新卒で就職した先も、ポストプロダクションという、
映画フィルムの現像や編集の会社だった。
だが、そこで僕は「近くても遠い存在」を目にする。


土派手な格好の映像作家たちが、目の前で、
デカイ態度で振舞う姿。
僕はスーツを着て、彼らにコーヒーを出し、
地味に編集の見積もりなどをする。

場合によっては、接待もする。
キャバクラの姉ちゃんに有名映画監督がチヤホヤされる
中、僕は唇を噛む思いだった。

このまま、ここにいてもさして変わりはないだろう。

20歳くらい上の上司が
「俺はまだ映画を作る夢をあきらめていないのさ」
と言って、女性の肩に手をまわしている。

自分もこうなってしまうのか。
中途半端な環境で甘んじてはダメだ。
きっと後悔する。

その後僕は同社を10ヶ月で退職。
失業保険ももらわずにそのままテレビのADとなる。

配属されたのは、月9のドラマだった。
5人いるADの中の5番目。フィフス≒ボロ雑巾だ。


ADの仕事は、それこそ幅広い。
俳優の立ち位置を決めるためのバミリ(ガムテープで
印をつける)や、カメラテスト時に役者の立ち位置に
立つスタンドイン、しかし仕事の大部分は機材運びと
食料などの買出し。あと、ちょっとした美術品の
アイディアを練ることもある。


睡眠時間2〜3時間。自給にすると200円くらいだろうか。
毎晩カプセルホテルで、缶ビールを飲み、スタジオの
ある渋谷の街を眺めていた。

「そうか、今日は日曜日か。みんな楽しそうだな」


慣れない体育会系気質と睡眠不足で発狂しそうになりながらも、
たまにスターにかけてもらえる温かい言葉。

「やめないぞ!俺は絶対ディレクターになるんだ!」

しかし、そんなに意気込んだって物事うまくいかない。

寝坊による遅刻二回。
あと一回で現場禁止(撮影には行けずデスクワーク
のみの屈辱扱い)となってしまう。


「もう絶対遅刻なんかしないぞ!」

そう思って1週間ぶりに家に帰る。
週に一度の半日休みだ。

ドラムバッグに入れた汚れ物を洗濯機にぶち込む。
乾燥機はないから、部屋干しして、これが乾ききる前の
朝方、またスタジオへ向かわねばならない。

ピーンポーン

少しゆっくり目にチャイムが鳴った。
ドアを開けるとカノジョがいた。
手には合鍵を持っている。


「好きな人ができたの」

そう言って、カノジョはあっけなく去っていった。

マスコミ陣の離婚率は高い。
ADはよく、看護婦と付き合うように言われる。
多忙の傷を慰めあえる関係だからだ。

しかし僕のカノジョは普通の学生。
毎週深夜に呼び出され、セックスしては寝る・・・
という関係に耐え切れなかったのかもしれない。

そんなバカな僕は、それから男友達数人を呼び出して
朝まで語り明かして飲んだ。

毎晩の寝酒ビールと違って、しみじみと
飲む酒は美味い。

そして・・・


目が覚めたのは11:00。

ジ・エンド。
三回目の遅刻。


スタジオに行って、床掃除を隅々までして
土下座したが世の中そんな、甘くはない。


翌日、僕はみんながロケに出かけた後、
スタッフルームで一人電話取りをするのだった。

何気なくテレビをつけると、どこか山奥の神社
が映し出される。

美しい自然の緑と、茶褐色の神社は、真っ白になった
僕の頭を、執拗に染めていった。

「そうだ。京都へ行こう病」か、僕は。

冷静に考える。
今の会社で何年頑張っても所詮弱小制作会社。
ニュースの仕事がメインだし、映画とは
遠ざかっていくような気もする。

今まで耐えてきたものが、プッツリと
切れた。

あと二ヵ月もいればエンドロールに名前
が載るが、もう、そんなのは別にいい。

僕は自分にそう、言い聞かせた。
「根性無し」
「へたれ」
何と呼ばれても、もういい。

「お世話になりました」

その一言を書いて、スタジオを後にした。

×××

出所した犯罪者のような気分だった。
懲役3ヶ月。酒気帯び運転ぐらいなもんか。

真昼の日差しがまぶしい。

これまで、昼間、渋谷の街に出ることはあっても、ほとんどがスタッフの食事の買出し。
富士そばの汁がこぼれないように必死だった僕は、
日差しなんかまともに見ていなかった。


母親に電話する。
「あんた、もう帰ってきなよ、札幌で休めばいいじゃない」

涙が出るほどうれしかったが、
田舎者にはそれなりのプライドがある。
理由はないが、東京にいたいというプライド。

「もう少し、頑張ってみるよ・・・」

×××

渋谷センター街で、ビッグマックを食いながら、
オーロラビジョンを眺めていた。
GOBというパンクバンドのPVが流れている。

「やっぱり、映像をやりたいな。音楽PVはどうだろう」

そう思って、その一週間後、PV制作会社のADとなるが
提示された条件は
「給与なし。交通費なし」

貯金6万円の僕は、当然一日で辞めてしまう。


「やっぱり俺には縁のない世界なのかな」


×××

その夜
「手相を見せてくれませんか?」と
水玉ネクタイの男に渋谷で声をかけられる。

迷わず手を見せる。

「あなたは今まよっていませんか?」

うさんくせえな。
だが、すがるものも他にない。

「それより、俺に向いてる仕事は何?
 クリエイティブは?映画監督になれそう?」

クリエイティブ病の僕は、たちが悪い。

水玉男「うーん。むいてるかもね。いい先生に診てもらって
    修行をすれば・・・」

僕「いくらですか??」

水玉男「初期費用は8万円です。」


僕の貯金があと2万円多ければ彼にくっついて
行ったことだろう。

×××

そして、僕はバーテンダーとなる。
映像の仕事から離れようという結論だった。

心地よい職場と、暖かい仲間。
そして、こんな僕にも酒をおごってくれる常連さんたち・・・

だが僕の中で、まだあきらめきれない気持ちがあった。


「AV監督」

これが、僕の中で映像の世界への最後の扉だろう。
CM以外はほとんどやった。


エロも好き。女ともヤリタイ放題。
半分がそんな幻想だった。

だが、残りの半分は自分探しの旅。
どうせなら、落ちるとこまで落ちてみよう。
自分の中でAVに出れば何かが変わるかもしれない。

「プライドぶっ壊したる・・・!!」


野口英世に憧れ、ガリ勉少年時代を送った僕。
テストで満点を取ることに生きがいを感じていた僕。
だが、いつの間にかその重たい鎧に耐えきれなくなっていた。


鎧を脱ぎ捨てられるものなら・・・


「AV監督志望」と書いた履歴書と、片道切符を持って、
僕は面接のある代官山へと向かった




・・・つづく




by 雑魚ゾンビ 




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