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さらばガリ勉の日々よ 第一回
〜2002年新卒の夏〜 |
1日15時間の勉強の先にある世界は、所詮こんなもんだったのか。
2002年新卒の夏。
スーツの上着を抱え、得意先近くの公園でコロッケパンを頬張る僕。
汗だくになりながら、次の訪問先の住所を確認していると、
目の前ではホームレスが鳩に餌をやっている。
「俺と、彼と、どっちがマシな暮らししてるんだ?」
日能研のリュックを背負ってた奴らは、今、どうしてるのだろう?
模試の成績優秀者だった奴らは、今、どうしてるのだろう?
アンダーラインだらけの参考書。
赤チャートやZ会の先にあるのがこんな世界だったとは。
くだらねえなと思いつつインターネットで、高校時代のクラスメイト
の名前を検索する。
医学部のスキーサークルか何かで楽しそうに笑う奴。
どこかの弁護士事務所に所属している奴。
「やっぱり俺ももっと勉強して医者とかなっておけば・・・。
私立文系なんか行かずに・・・」
また、始まった。
受験勉強で培ったくだらねえプライド。
やりたいことは別にあるのに、そん時の僕が欲しかったのは、
社会的地位と心の平穏。
やりたいことは後回しで、まずは地位と安定した収入・・・なんて
虫のいいことを考えていた。
毎晩大学時代の写真を見ては、
あの頃のモラトリアムを懐かしく思っていた。
それでも、元ガリ勉は行動に出る。
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数ヵ月後。
正月早々、「あけましておめでとうございます」の一言と共に
退職願を提出した僕。
「一度辞めると癖になるぞ」
油ギッシュな課長は、餞別の商品券を渡しながら
そう言った。
「け、今にみてろよ」
内心そう思っていたが、実際その通りになってしまうとは・・・。
それから転職9回。
「今回辞めたのは、自分のやりたいことと違って・・・」
自分を正当化しようとしていた僕。
醜すぎる。
素直に、
「俺、バカだからさ」
と開き直っていればよかったのに。
その後の僕は転がり続ける石ころのように、数奇な人生をおくる。
AV男優になって、ゲロまみれの女の子の口にモノをブッコンだり、
新宿二丁目で「誰か僕と付き合ってください」の紙を持ったまま寝て
ゲイに犯されたり、
人間モルモットになって血を売り、世界中の国々を旅したり、
テロの前日にロンドンを訪れ、無一文になってしまったり・・・
そんな奇異な経験を続けるうちに、長年悩まされ続けた鬱も治ってた。
自分の嫌いな価値観やプライドを壊すには随分と時間がかかってしまった。
だけど、今の僕、何も後悔していない。
机の上に広がった、ガリ勉少年時代の自分と今の自分を比べると
笑いがこみあげてくる。
ガッハッハ!
随分生きるのが楽になったものだ。
神様が僕にくれたもの。五体満足の体と、ネタ人生。
ネタまみれの人生を送っていれば、失うものなんてありゃしない。
今後、僕が経験した奇異な体験を語っていこうと思う。
読んでくださったみなさんが、笑い飛ばして元気になってくれれば幸いです。
くれぐれも両親には読んでほしくないなあ・・・
・・・つづく
by 雑魚ゾンビ
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