>>>インタビューを終えて
湯川トーベン。
バンドも音楽もノータッチな人種なら、
「温泉地のおいしい名物かしら?」
と思ってしまうであろうこの名前。
しか〜し!
バンドを志した者、音楽をこよなく愛する者ならば、
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誰しも耳に、目にしたことがあり、尚且つ、
「うお〜う!トーベン!」
と、思わず唸りを上げてしまうこの名前。この人物。
それが湯川トーベン。
古くは、太陽系第10惑星からやってきた宇宙人アイドル「スターボー」に始まり、ボーイッシュな出で立ちが、何かを吹っ切っていきなりカリアゲヘアーにしちゃったキョンキョンにも似ていた、おニャン子クラブ会員番号11番の福永恵規、はたまた、オシャレなところで、SPIRAL LIFEを手伝ったかと思えば、大御所、小林旭のレコーディングにどどーん!と参加。
芸能界のゴッド姉ちゃん、和田アキ子と共に「トゥモホー!トゥモホー!(正しくはトゥモロー)」と踊り(踊っちゃいないか)、「ドラゴンボールZ」までも、かめはめ波〜!と手がけて、お子様の心を掴むのも忘れないというこの多才ぶり。
なのに、きっちりソロでもバンドでも活動。
「オイラ風来坊。人生はロッケンロー!」
なんてうそぶく若者に、トーベンさんのバンドに対する姿勢をみろ!と言ってやろう、と決めた、この夜。
インタビューを終え、ライブをみせて頂いて、そう感じたのである。
トーベンさんの音楽活動歴は、優に30年を超えている。
キッカケはどうであれ、バンドを始めてしまったものは、
皆が大学へと進学する時期、
皆が就職するためにリクルートヘアーにする時、
女房を貰って「結婚っていいよ」と、幸せな顔をする友人を見た時、少なからず、
「俺ってこれでいいのか!?」
と、長い髪をいじくりながら自問自答する時期がくる。
簡単には、音楽で飯なんて食っていけないことも知っている。
久しぶりに会った友人に、
「おまえ、まだそんなことやってんのかよ」
なんて言われたりする。
そうだよなぁ、馬鹿だよなぁ、俺って。
老後どうすんだよ。
そんな思いでいる者に、トーベンさんが答えをくれたのだ。
「自分はプロだ、って言い切っちゃうことだよね」
30年以上も、バンド活動をし続けられる、その信念とはなんぞや!?
と、あたしが伺ったところ、この言葉を、実に肩の力の抜けた穏やかな口調でおっしゃったのである。
お金を払って観にきてくれる人がいるからには、全身全霊でそれに立ち向かわねばならない。それがプロである、というのは当然だが、その言葉はやはり、自分を強く信じていないと言えないセリフでもある。
その言葉には、自分にも周りにも、大きな責任がつきまとうからだ。
友人のライブなんぞをライブハウスに観にいくと、対バンで出ているバンドにはよく、
「今日のお客さん、ノリ悪いなぁ」
「みんなオトナシイんだね」
などとMCで言い放ち、自分らの技量の無さを客のせいにしている奴らをちょくちょく見かけるが、そういう奴らは、自分達の立場を完全に勘違いしている。
「客がノッてこないから、俺らもノレない」
オマエは小銭稼ぎが目当ての一日体験キャバ嬢かよ!?
お客のツボをくすぐって、トリコにするのがキャバ嬢の仕事だろ!?それがプロだろ?名刺だけ配ってりゃ次もくるってわけじゃないぞ!?
ってなんでキャバ嬢の話はどうでもよろし。
そう。トーベンさんである。(強引)
トーベンさんのライブは実に心地良い。
始まるや否や、もう目が離せない。
言葉のひとつひとつが、実にクリアに伝わる。
力強いギターが、まさにバンドマン。
そう、バンドマン。
トーベンさんは、インタビューで、こうもおっしゃっていた。
「アーティストとか、ミュージシャン、ってのは嫌だね。やっぱりバンドマンだね」
と、自身をあくまで「バンドマン」であるという。
確かに、アーティスト、というと、不自由な場所で、孤独と戦いながら、赤子をひねり出すかのように作品を生んでいるイメージがある。
ミュージシャン、というと、自分のカラーを主張せず、器用に無難に、音楽人生に乗っかって生きている人、というイメージがある。
勝手なあたしの見解だが。
しかし、バンドマン。
不器用ながらに、自分を信じて毎日を唄うように生きている。
そんなイメージ。
何をするにも手が抜けない。ほんとは手を抜きたいけどね。
そんなイメージ。
「(全国のライブハウスをまわる)旅は、やっぱりキツイよ。行く前は、ああ、嫌だなぁ、って思うもんね。でも、みんなが待っててくれるからね」
そう素直に語るトーベンさんは、どう考えてもバンドマンである。
ライブ前、控えの椅子に座っていたトーベンさんは、大ベテランであるにも関わらず、セットリストを確認し、目薬も差し、点鼻薬もシュコ!と差し(って単に花粉症ってオチはないですよね?)、オシボリで何度も手を拭いて、実に準備に余念がなかった。(盗み見してスンマセン!)
ステージ直前まで飲んだくれて、そのままステージに上がって、意味不明の演奏をするバンドが多い中、このトーベンさんの姿勢には、ほんとに頭が下がった。
そして、日常をそのまま切り取ったような、ほんわかした詩に乗せたその唄声。
「夢はかならず叶うよ」
「みんな孤独なんだよ」
「寂しいのは君だけじゃないよ」
「あきらめないで!」
そんな陳腐な言葉の羅列を押し売りする自称アーティストの言葉よりも、なんと素直に心に響くことか!
自分の経歴にあぐらをかくでもなく、実に真摯に音楽と向き合い、ライブを観にきた人全てを楽しませた上に、元気までくれちゃうトーベンさんは、やっぱりプロであり、バンドマンであり、お茶目さんなのであった。
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