「あなたはとても美しい!」
晴留屋さんの口癖だ。
底抜けの笑顔で、こんな言葉をさらっとはいてしまう。
でもその笑顔の裏に、どれほどの苦悩をかかえているのだろう・・・
「とにかくがむしゃらに働きましたよ。
みんなが帰った後も、一人で現場に戻って徹夜で仕事 した事もあります。
そうまでしなきゃ、終わらなかった。
でも、気が付いたら100円もらえる仕事を50円でやっていました。
お金が残るわけないですよね・・・」 |
Photo 誠一郎
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残るどころか借金は増え続け、とうとう「殴られ屋」へ。
一人一分千円。
せっかく体を張って稼いだお金も、他人に配ってしまう。
「私よりも困っている人がいっぱいいたんですよ。そうすると黙っていられない。それがいけないんです・・・」
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結局最愛の家族とも離れ、いつ明けるとも知れぬ闇の中を歩いている。
でもきっと逆転出来ると本人は信じている。
またいつか家族と共に暮らせる日が来るのを、心待ちにしている。
「人間、きっと誰にでもチャンスはあるんですよ。それを掴めるか掴めないか。
だからいつも自分に言い聞かせてるんです。
一発大逆転ってね!」
一発大逆転・・・
そんな簡単な事じゃないのは、本人が一番よく知っているはずだ。
でも唱え続ける。
「殴られ屋の頃、取材で会う人ごとに何か書かせてくれって、頼んでました。
だからこうして本も出せた。
大事なのは、あきらめないで出来るまで続ける事なんです。
少しずつステップアップしていけば、何かが見えてくる。まぁなかなか結果が出ないんですけどね・・・」
肩を丸め、椅子にちょこんと座る姿は、好々爺のよう。
実際この若さで、もうおじいちゃんなのだ。 |
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Photo 誠一郎 |
「この間まで二番目の娘が高校3年だとばかり思っていた。ところがもう大学生になっていたんですよ。
息子も中学2年か3年のはずです。はっきりわからなくなっちゃって・・・」 |
家族と一緒の生活。
当たり前の事なのに、それが出来ない。
時折ふと見せる陰り。
でもあっという間に笑顔でかき消してしまう。
「だって笑ってた方がいいでしょ? 悔やんでも何も進まないじゃないですか。
だったら笑っている方が、きっといい事がおこるに違いないです。
そう思いません?」
晴留屋さんに我々が救われる気持ち。
これは一体何だろう?
自分より苦労している人がいる事の安心感・・・
「自分の存在が励みになるなんて・・・でもそんな風に言ってもらえると、嬉しいです。ありがとう。」 |
Photo 誠一郎 |
晴留屋さん、きっと一発大逆転しましょう。
笑顔で家族のもとへ帰りましょう。
そしてその時に、この言葉を贈ります。
「晴留屋さん、あなたが一番美しい!!」
Written
by Fotonoss K
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晴留屋明(はれるやあきら)プロフィール
1963年5月27日生まれ。中学校卒業後、ヨネクラボクシングジムに入門。
20歳でプロボクサーデビュー。引退後、電気工事会社を立ち上げたが事業に失敗。
1億5000万円の借金を背負うことに。1998年12月から借金返済のために「殴られ屋」を始める。
男性は1分間1000円、女性は500円で殴り放題。
3年4ヶ月続けてきたが現在は休業中。 |
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