子供が保育器に入っていて一番辛いのは
まわりの女の人が生まれたばかりの子供を抱っこして
自分の病室へと帰るシーンを見ている時だったと思う。
そして、その光景をうらやましそうに見つめる
彼女のことを見ている時だったと思う。
そんな保育器生活が早く終わることを
祈りながら、じりじりとした気持ちで時間は
過ぎていった。
いつものように朝、彼女の様子を見に行った。
そして子供のいる保育器の部屋へと向かった。
そして相変わらず点滴の刺されている子供を
見て複雑な気持ちになる。
そして帰る。
そんな日々が2日ほど続く。
生まれた瞬間の喜びのムードはいつのまにか
どこかに消え去り、
僕も彼女の家族も何となくローな気分だった。
その証拠に酒が旨くなかった。
しかし、3日目の朝、そんな点滴生活にもようやく
明るい兆しが見えた。
「保育器から出れるよ!」
という笑顔のこぼれる情報をもらった。
僕はそれを風呂場で聞いたが、
思わず歓喜の声をあげた。
そして急いで服を着て病院へと向かった。
病院に行って話しを聞いた。
検査次第だけど多分大丈夫だから、
今日の午後には出れるだろうとのこと。
そして検査の結果がよければ点滴も取れるだろうとのこと。
そう自信を持って言う、ベテランぽい看護婦さん
の言葉が心からうれしかった。
予定どおりその日の午後、子供は保育器を脱出した。
そしてさらに嬉しいことに点滴も脱出した。
僕は心の底から嬉しかった。
この日が子供の本当の誕生日のような気さえした。
そしてその夜、一人でお祝いした。
酒は旨かった。
…つづく
羊水を飲む
・・・ 出産時に赤ちゃんが羊水を飲むのはかなり多いケースらしい。
羊水というのは赤ちゃんの排泄物がたんまり入っているため、相当毒性が高い、
出産が途中で難航した場合によく見られる。これを防ぐためにはお母さんがしっかりと出産呼吸法をマスターしてスムーズに子供を産むしかない。
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