前回に続いて学生の頃の話になってしまうが
僕は一時期、池袋にあるキャバレー「クラブハイツ」にて
ボーイとして働いていたことがある。
時給は確か1000円
ここは老舗のキャバレーで
いわゆるキャバクラみたいなところではなく、
まるで映画の中に出てきそうな巨大なグランドキャバレー。
グランドキャバレーと言うのは角川映画「キャバレー」を
見たことがある人ならすぐわかると思うが
真ん中にバンドステージがあり、そのまわりにダンスホール
そして客席は150席くらいある。
とにかくでかい。
そこに夜な夜な小金を持っていそうな人が遊びに来る
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ここは面白かった。
友達も出来たし、色々な経験をさせてもらった。
バブルが終わるちょうど最後くらいの時期で
金の使い方が派手な人が多かった。
働いている人たちもくせのある人が多かった。
社員の人は大体がもと遊び人のおじさんたち。
厨房には何か事情があるのだろう影のある人たち。
バンドマンの人たちは本当、貧乏そう。
そして僕たちボーイは学生もいれば、ボクサーの卵、役者の卵
などなどバラエティーにとんでいる。
そこで夕方4時から夜の12時まで働く。
仕事はボーイ。
呼ばれれば飛んでゆく。
でも仕事は楽だった。
社員からして、裏のボトル倉庫で客のヘネシーを
一杯あおって、うめー!とか言っている環境だったから
すごく楽しかった。
僕はここでかなり高級酒にくわしくなった。
味にも詳しくなった。もちろんタダで。
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お客にはいやな人もいた。
お客の目当ての店の女の子とちょっと親しく話しただけで
殴られたこともあった。
でもすごく紳士な人もいた。
その人にはよくこんな仕事早くやめなさいと言われた。
そしてこれからの日本のことをよく言っていた。
今思うと全て正解だった。
その人はバブルの崩壊も完全に見抜いていた。
その人はとても店の女の子にもてていた。
風変わりな客もいた。
その人は若く30代くらいで、自分の彼女とよく遊びに来ていた。
それは僕の目にとても新鮮に映った。
そしてその男の人はすごくもてていた。
その男の人は何の仕事をしているか
よくわからない感じだったけど、
男の僕から見ても色気があるなと思った。
すごく素敵な光景に見えた。
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女の子といえば、店の従業員はボーイもふくめ
大体は誰かしら店の女の子と関係を持っていた。
そしてよく同棲したりしていた。
女の子のとりあいでボーイたちが
本気で喧嘩したりもしていた。
僕はそれを見ながら、ほんと映画の世界みたいだな
と笑ったりしていた。
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そんなこんなで楽しい職場だったが、
僕はこの仕事は半年くらいでやめた。
理由はそこにいるのに耐えられなくなったから。
僕はここで大変重要なことを学んだ。
それは自分が一番下にいるということ。
キャバレーという場所はそのまま社会の縮図。
金を持った人間が一番上で、金もない地位もないただの
バイトの僕が一番下。
この職場は面白かったけど、そのことに気づかされ
いてもたってもいられなくなった。
自分のポジションに耐えられなくなった。
そして辞めた。
最近、僕は自分の彼女(妻だが)とキャバクラに行ってみた。
僕は今、社会のどのポジションにいるのだろう。
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