2ヶ月後。 従属する会社のレベルを、仕事の内容をステップアップさせるという目論見。 クビになるということを物ともせず、さらに上を目指してやるという野望。 このうちの一つ、従属する会社のレベルを上げるということに僕は驚くことに成功した。 僕は周りの白い目をよそに本当に働く会社のレベルを上げることに成功した。 業界は当然同じ広告業界。 資本金、知名度など本当にアップした。 ほぼ10倍。 名前を聞けば業界内の人は大体わかる。 そういう会社に転社することに成功した。 僕の提出した、名づけて「僕はこんなことが出来ますよー」企画書は先方に絶賛され、何度かの面接をへて入社が決定した。 これは本当に成功だった。 見事にやってやった。 僕は嬉しくて、同僚に自慢しまくったのを覚えている。 やったぜ!今度こそ本当にクリエイティブな現場だぜ! と吹きまくったのを覚えている。 そして羨ましがる後輩に向かって、お前らももっと挑戦しろよ!頑張れよ!と白々しいことまで言っていた記憶がある。 (今思うとメチャクチャ恥ずかしい...) しかしその幸せは長くは続かなかった。 もう一方の仕事の内容という点で落とし穴がまっていた。 これは予想しなかった。 働き初めてみると、何もかも面接時の待遇と違った。 まず致命的なことに社員用のPCがない。 なんだそりゃ。約束が違うよという状態だった。 僕はその頃すでに自分専用のPCがないとにっちもさっちも仕事が出来なかった。 そしてさらに致命的なことに、この会社は外面こそはたいそうクリエィティブを唄っていたが、ふたを開けてみると、内実は全然違った。 結局どこもそうなのかも知れないが、オリジナルな企画なんてそこにはなかった。 またも大広告代理店のいいなり。 奴隷。 それも前の会社より会社の規模、仕事の規模が大きくなっているのでその奴隷度がヒートアップしている。 労働環境も面接時とまったく違った。 うちは社員を大切にする会社ですから。。。 社員はみんな仕事もプライベートも楽しんでいますよ・・・ とあんなに言っていたのに、入ってみると終電前に帰る社員はほとんどいなかった。 週の半分くらいは会社に泊まっているやつさえいた。 そいつは結婚しているらしく、自分のデスクに嫁さんの写真を置き、深夜、仕事をしながら「ああ、帰りたいなー」などと、ため息をつく。 帰りゃいいじゃねえか、このアホ!と内心思いながら、 僕はこの光景を見て、心の底から やってしまった・・・ と思った。 そして理解した。 僕は会社のレベルを上げると同時に地獄のレベルも上げてしまったのだ。 そうだ、僕はさらなる地獄へ来てしまったのだ。 僕の背筋は凍った。