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結論、君よ自由に生きるべし

Vol.3  AV業界をのぞく


金がない。

飯が食えない。

酒も飲めなくなってしまう・・・

そんな焦りとともに見る求人誌にその情報はあった。

「AD募集。当社は大人向けの鑑賞ビデオ映像制作の会社です。」

映像制作!

AD!

カタカナ職業に弱かったその頃の愚かな私は、即座にこの募集に応募することにした。

大人向け・・・というフレーズにちょっとひっかかってはいたけれど・・・



面接場所へとおもむいた。

新宿は歌舞伎町の片隅のマンション。

指定された部屋へと向かう。


出迎えてくれたのは、40歳くらいのおじさん。

非常に明るいおじさん。

名刺を渡されると、そのおじさんは社長だった。

そして面接ははじまった。

面接を担当したのは、そこの社員のような別の人だった。

面接は意外とちゃんとしていた。

色々なことを聞かれた。

その中で趣味は?という項目があった。

僕は「酒です。」

と、一般常識のないすさまじい返答をしていた。

でも、その答えがヒットした。

社長さんに非常に気にいられ即採用という運びになった。

明日からよろしく、ということで事務所を出た。

面接を受けている時から、事務所の片隅にアダルトビデオのさまざまなパッケージがあるのは見ていたけど、まあ、予想どおりだなということもあって、あまり気にはしていなかった。

そんなことよりも金が欲しかった。

飢え死にしないために。



仕事が始まった。

給与は一ヶ月20万円。

雇用体系はなんとなく、うやむやにされた。

とにかく一ヶ月20万円。

まあ、20万円で死ぬほど働けということだね。

せっぱつまっていた僕はそれでも金をもらえるなら・・・

とその条件に文句は言わなかった。



環境は強烈だった。

そりゃそうだ、エロビデオ制作の発信地だもの。

自分のまわり360°全てがエロ!

エロ!エロ!エロ!

エロっていうのは、オープンで明るいところで見たって嬉しくもなんともない。

ただ迷惑なだけ。

そのせいだろうか、そこで働いていた先輩たちはもの凄くエロに対してドライだった。

不思議なくらいドライだった。



最初の仕事はビデオのダビングだった。

これはその名の通り、撮影した作品のマスターを商品にするための作業。

とにかくひたすらダビングする。

ダビングルームみたいなものがあって、そこにある約50台くらいのビデオデッキを使って、ひたすら大量にダビングする。

これは本当にきつかった。

ダビングしている経過を見守る必要があるから、モニターでチェックするんだけど、それは当然アダルトビデオ。

それを朝から晩まで見続ける。

正直、頭がおかしくなるかと思った。

正気を保つために、ひっきりなしにタバコを吸った。

タバコでも吸って頭を麻痺させないと、とてもじゃないがやってられなかった。





一週間ぐらいすると、撮影現場につれていかれた。

ADとして。


ついにアダルトビデオの撮影本番を見ることになることに、正直、僕は緊張した。

でも、まわりにはそれが悟られないよう、必死に

「僕はこんなこと余裕デース。」

という顔をした。

でも、やっぱりドキドキだった。


そんなドキドキの中、撮影は始まった。

僕の仕事はレフ板もち。

あと、擬似精子づくり。
(※作り方、卵の白身に牛乳をまぜて掻きまぜる。そしてそれをスポイトにいれる。そのスポイトを絶妙なタイミングでイキそうな男優に渡す。)

でも、ここで意外な事実を見た。

アダルトビデオの撮影現場は基本的にとても明るい。

これは事実。

女優も男優も仕事だからか、すごくサバサバしている。

笑いながら、ああしよう、こうしようと裸んぼうの状態でディスカッションしている。

そのディスカッションの内容はここでは書けないほど、エグイんだけどね・・・

そして、そんな風景を見ながら時は過ぎていった。







結果からいうと、僕はこの仕事から一ヶ月で逃げた。

最初の給料20万円をもらったその次の日に逃げた。

理由はいろいろあったが、結論としては、「自分には耐えられなかった」
というのが一番、まとを得ていると思う。

僕はこの世界の人とはまったく違うタイプなのだと強く認識させられた。

ものすごーく、単純に言えば、体育会系と文科系。

根っから文化系の僕にはとても耐えることが出来なかった。



色々な風景があった。

性というものを、勝手に高尚なものであるとしている僕にはとても信じられない光景が幾度も僕の目の前で広がった。

スタジオで・・・

街の裏路地で・・・

僕は平気だったが、人によっては女性が嫌いになるかもしれない。


最後に。。。

女性に幻想を抱いている若者たちよ。

安易にこの世界に足を踏み入れるな!

女が嫌いになるぞ!

それだけは言っておく。





(つづく)

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