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結論、君よ自由に生きるべし





合コン



20代のサラリーマン時代、取引先のために合コンをセッティングするのも仕事のうちだった。

僕はイベント系の広告代理店だったから、大体は取引先とイベントコンパニオンとの合コンの場を作った。

その費用は接待経費で会社には申請していた。

また、中には別件の仕事の請求書の中にうまく滑り込ませといてというクライアントの依頼も多かった。

まあ、とにかく合コンの場はよく作った。


個人的には合コンというものが嫌いな僕は、

その光景をよく冷ややかに見ていた。

でも、それはあくまで内面で、

外面は一緒に盛り上げてあげたり、太鼓持ちみたいなことをしていたんだけど。。。



今もそうだけど、合コンは嫌いだ。

人間の醜さ、愚かさ、その全ての博覧会に僕には見える。

極論すると、ブタの集会だ。



ブタが品の無い顔をして、唄い、喰らい、酔い、その場の性欲を吐き出す相手を必死に探す。

必死に底の浅い思慮で、かけひきで、探す。

そう見える。





まあ、それはいいとして、僕の中でもっとも悲惨だった合コンの話がある。

取引先は銀座にある中堅広告代理店Y。



普段からやりにくいクライアントだなとは思っていたが、合コンさえセッティングしてあげれば、仕事は潤滑にゆくので、その日もセッティングしてあげた。

だが、この日は誤算があった。

まさか、あんなことになるなんて思いもしなかった。

それは、取引先が僕の知らない男性を連れてきたことから始まった。

その男性は違う部署のクリエィティブ担当とのことで、一度、僕に合わせておきたかったと、紹介された。



ぱっと見の印象は、おお!クリエィティブ!という感じの洗練された感じ。

話ぶりも悪くない。

僕は、ははー新しい取引先様と深ぶかと頭を下げ、丁重におもてなしした。



宴はすすんだ。

最初は皆おとなしく、ビールやらなんやらを飲んでいた。

そして皆、おとなしく相手の品定めをしていた。

ちなみにこういう席での僕のポジションは、簡単にいうと圏外。

というかサイフ。

取引先での席で取引先より楽しそうにすることは許されない。

そういう力関係は女性の方もすぐに見抜く。

なので圏外。

まったく面白いことなし!

また幹事をしなければならないので、酔うこともままならない。

やはり面白いことなし!



この日の宴の場所は麻布にあるワインバーみたいなところだった。



この場所は先方が指定してきたのだが、この場所が悪かった。

宴が中盤に入り、先方が連れてきた新顔のクリエィチィブマンがこんなことを言った。

「そろそろワインなんか、どうですか?」

彼はワインに相当詳しそうだった。

クリエィティブマンのその提案に、女性陣は目を輝かせた。

「私、ワイン好きー」

などと女性陣はワインの話題に群がった。


一応、僕はサイフなので、クリエィティブマンは了解を求める。

「・・・さん、よろしいですか?」

ワインに詳しくない僕はワインの選定ごと彼にまかせた。

それを聞き、彼は自在にオーダーをはじめた。

聞いたこともないようなかっこいい、英語やらフランス語がお店と彼の間で飛び交った。



彼はもう、モテモテの状態だった。

それに同調した取引先も鼻高々で満足気だった。

参加したイベントコンパニオンたちも、ワインだワインだと、がぶがぶ、がぶがぶ飲む。

本当に味わかってんのか?

という状態で、がぶがぶ、がぶがぶ飲む。

ただ酒だー!という感じで飲みまくる。

調子に乗ったクリエイティブマンは、すっかり気をよくし

「次はこれなんか、どうだい?」

とさらにオーダーをすすめる。




取引先を喜ばすという点では、この光景は成功だった。

しかし勘定する段階でオチは来た。

僕はお店側が提示した金額に目をむいた。

28万円。

正直、何だそりゃ。と思った。

でも、取引先の前で表情を崩すことは許されなかった。

僕は何事もなかったように、接待用に会社に持たされているクレジットカードを出した。


そして店を出た。

取引先はすっかりコンパニオンと盛り上がり、2次会だー!とか言って都会のネオンの中に消えていった。


サイフの機能を終えた僕は誘われなかった。


そして後日、そのあまりの高額の接待費は会社で大問題となった。


ふざけた接待をする男として、僕はますます会社内の立場を失っていった。






(つづく)


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