お金が欲しかった。 心の底からお金が欲しかった。 そうすればこんな思いをしないですむと思った。 そんな26才の夏だった。 夏の暑さにやられた僕の脳はある決断をしていた。 一線を越える。 貧乏から脱出するために、一線を越える。 方法は詐欺。 絶対に捕まらない詐欺をしてみせると心に決めた。 調査業にいたおかげで、僕は色々な裏技を知っていた。 その裏技を駆使して僕は準備にとりかかった。 詳しくは省略するが、 要は石川五右衛門になりたかった。 お金の余っているところから、余っているだけ拝借しようと思った。 それはまさに夏の凶気だった。 準備は着々と進んだ。 毎日毎日、イメージトレーニングをした。 そしてありとあらゆる失敗のケースを想定した。 そしてシナリオを綿密に修正していった。 この頃はひとつの考えがあった。 それは弱いものが強いものに向かっていった 場合、罪は許されるのではないだろうかという考え。 そんな考えで自分をひたすら正当化しようとしていた。 まさに「罪と罰」 ドストエフスキーの小説の主人公と同じ苦悩を持つ 時間を持つとは思わなかった。 だが、僕の向かおうとした相手はそれくらい 恐ろしい相手たちだった。