"春吉君、 世の中に悪い人はいません。悲しい人がいるだけです。春吉が大きくなってから考えてください。" そう息子に言い遺し、写真家、渡辺克己がこの世を去ったのは2006年1月29日。 享年65歳。 渡辺克己は故郷岩手の高校を卒業後、写真家を目指し上京。 上京してしばらくは安定した雇われカメラマンとして生活するが、いつしか新宿の世界観に魅せられドロップアウト。 以後26歳でカメラ片手に新宿の夜を流すフリーランスとなる。 そのこ頃は日本中が高度成長期にさしかかろうとしていた時で、その潔い勇気には目をみはるものがある。 その頃の渡辺克己の言葉。 「ああ、これでやっと自由の身になれたーー。 それが偽りのないひとつの実感だった。僕は、わずかばかりの退職金で、新しい引伸ばし機を買った。 “新宿の流しの写真屋”一本で生きることにしたのである。」 ・・・新宿群盗伝伝より ちなみに、その流しの金額設定は「1ポーズ3枚1組200円ポートレート」 焼き芋屋、写真館経営など、さまざま職業を身につけながら、この流しの写真屋を続けた渡辺。 そんな人生を貫いた渡辺は、死の間際、最後にもう一人の息子、次郎にこう告げた。 ”父ちゃんが32年かかって作った本です。困難がきたとき開けてみると何かヒントがあるかもしれないよ。” その本こそが、30年間の仕事をまとめた写真集「新宿1965-97」(新潮社1997年) ハートにズシンとくる一冊。 そして、世の中に悪い人はいません。悲しい人がいるだけです。という、深遠なメッセージ。 生きる勇気をもらえる言葉です。
フリスタ編集長 MIZK 2008-10-14
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