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  2007/7/28


 LIFE.26

 " パン工房ブランジェリー・ケン 田崎健一郎さん "

by フリーライター 高山量宇 / Photo MIZK

■パン工房ブランジェリー・ケン DATA

板橋区赤塚2−2−17 東永地産ビル1F (東武東上線「下赤塚」北口徒歩2分)

TEL/FAX 03-5383-2216 (年中無休8:00~20:00)

http://boulangerieken.itabashi-life.com/index.php



田崎さんのパンを食べると、パンが麦からできていることがわかる。香りがする、味がする、噛めば噛むほどに。厳選した麦でていねいに作ったパンが人気のパン工房、ブランジェリー・ケン。

店長の田崎健一郎さんは、偶然にも15年前、僕が初めてのバイト先でお世話になった人だった。フリーターとしていくつもの職業を経験しながら、演劇や格闘技の道も模索していた田崎さん。何者かになる人だとは思ってたけど、何になるかは予想できなかった。まさか、こんなおいしいパンを作る職人になってたとは。




◆◆◆◆◆ 


2ヶ月前の5月。テレビ東京の『突撃!アド街ック天国』を何とはなしに見ていたら、目を疑った。突然の再会。今からおよそ15年前、初めてのバイト先でお世話になった先輩がパン職人の格好をして出てた。え?マジ?なんで??? 田崎健一郎さん。

学生時代のバイト先の人間なんて顔すら思い出せないけど、この人だけはフルネームで覚えてた。板橋区の下赤塚にあるという田崎さんのパン屋。次の日すぐ会いに行って、自分のブログで紹介した。もっともっと多くの人に知ってもらいたくなった。そこで今回フリスタさんにページを提供していただきました。

お店についたのはオープン1時間後の朝の9時。ガラス貼りの店内には、もう所狭しとパンが並んでいる。奥の工房で粉にまみれている田崎さん。

「大丈夫かな?話を聞いてもらう場所あるかな…」12畳くらいの工房には焼かれる前のパン生地が並んだトレイや、サンドバッグみたいなデッカい小麦粉の袋がうず高く積まれていて、足の踏み場もない。重箱のように積み上げられたタッパーからマンゴーとおぼしきドライフルーツを取り出して、人気商品のひとつ、ベーグルの成形作業にとりかかろうとしていた田崎さん。

立ち仕事でインタビューが始まった。


「ーパン屋さんて朝早いイメージがあるんですけど、今朝は何時起きですか?」

「起きてないです。昨日の夕方6時頃からずっと仕事してますね。これが終わって、お昼前には寝られるかな。」

「ーお店を閉めるのは夜8時ですよね? その後、片付けや仕込みでそのままずっと?」

「そうですね。でも8時以降も開けてることもあります。ついこないだ、深夜2時頃、プライドのリングアナをやってたケイ・グラントさんがいらっしゃいましたね。なんでこんな時間まで開いてるんだって思われただろうけど(笑)」

「ーしかも年中無休ですよね?」

「オープンして1年半。身内の不幸があった2日間とお店の改修工事のための2日間を除いた年間361日。

毎日15時間働いてきました。今年の正月三が日はスタッフの子には休んでもらったけど、一人で店を開けてましたね。それでも最近はずいぶん楽になったかなあ。オープン当初は3日完徹で倒れるまで働いたり、ここの床に寝袋持 ち込んで暮らしたりしてましたから」




「ー!!」

「だから僕の生き方が、読者に希望を与えるかはわからないよ(笑)。絶望かもしれない(笑)」



美輪明宏さんの言葉に「人より頭ひとつ抜きん出てる人は、他人の3倍努力してる」っていうのがある。今まで頭ではわかってたんだけど、この瞬間やっと実感できた。これがたぶん、3倍。




***



「ー15年前、僕が会った時の田崎さんは20歳。ファーストフードで働くフリーターで、役者や格闘家も目指してた。『プロ格闘家になって、アルティメット大会の金網に入っちゃうのか、この人は!?』とか思ってました(笑)。」

「正道会館で空手と柔術を習ってましたからね。試合向けの練習をして、空手の東日本大会で5位とか入賞したのかな? 今K−1で活躍してる安廣一哉選手と同期で、一緒に練習してました」

「ーだから「アド街」でパン屋さんになってる田崎さんを見た時は、本当にビックリした。田崎さんて他にも芝居やったり、仕事もいろいろ経験してましたよね。この人何になるんだろう?って。」

「そうですね。劇団で研究生やってた時期もあったし、仕事もいろいろやってましたからね。ミシン工場、解体屋、料理人修行、飲茶のお店…学校の勉強は好きじゃなかったから、中学出ると夜間の高校に通いながらすぐに働きはじめて」

「一番最初の職場は?」

「吉祥寺の花屋でした。2年働きました。今も店長とは面識があって、僕に仕事の基礎を叩き込んでくれたことに感謝してます。でも当時はブッ殺してやるとか思ってた(笑)。

仕事を教えてくれるわけではなく、目で盗まないといけない。自分の頭で考えて動いていかないと、すぐに手が飛んでくる。昔ながらの個人商店だったから、マニュアルで手取り足取り教えてくれるわけじゃないんですよね。時給は最初600円行かなかったし(笑)」




「ー田崎さんと知り合ったファーストフード店。社員より誰より、田崎さんが唯一責任感があって頼りがいもあった。お客さんの目線で動いて、お店の利益を考えて働いてる気がした。」

「だから15歳から花屋で働いてたことが大きかったんでしょうね。ファーストフードのお店は最初、“こんなラクしてお金もらっていいの?”って思いましたもの」


19歳まで働いたことのなかった甘ったれの僕には、“こんな大変だったの、仕事って!?”と思えました。



***

「ーパン屋になろうと思ったのは、いくつの時だったんですか?」

「いつだろう?ファーストフード辞めた後、23歳頃からいくつかパン屋でバイトしたり、雇われ店長になったり、大手のパン会社に社員として就職したこともあり…いつなんだろうね?」

「ー雇われ店長ってことは、いきなりこのお店を立ち上げたわけではなかったんですね。」

「10年前、25歳の時に初めて店を任される経験はしましたね。昔から、自分の店を持ちたいという気持ちはあったかもしれない。パン会社は就職してみたら、やっぱり合わなかったし(笑)」

「ー会社のどこがダメでした?」

「やっぱり品質や安全性よりも利益最優先で、材料や手間ひまにかかるコストを全部省いていくんですよね。お客さんの方を向いてパンを作っていない。会社の利益しか考えてないと思いました」




「ーでも田崎さんてもともとパン好きでしたっけ?」

「全然(笑)。むしろ僕はお米派。だけどフランスパンだけは好きでしたね。今僕のお店でも出してるカスクルートなんかは、フランスではおにぎり感覚で食べられています。パンて日本では軽いおやつ感覚だったり、昔の人にはバサついたコッペパンみたいなイメージが強いと思うけど、本来は麦で作った主食で、無駄なく栄養が取れるんですよね」


たしかに田崎さんの作るベーグルやバケットは食べごたえ十分。そして食べた後には、シリアルを食べた時のような体調の良さも持たらしてくれる。ちょっと他のパンとは違う感じ。



***


「“パン屋になるため”って意識はなく偶然だったけど、小麦粉の研究所で働いてた時期もあったんです。その時に小麦粉の勉強をずいぶんしました。

パンに限らず、“その土地で取れたものを食べるのが人の体には一番良い”という説がありますけど、国産の粉ってフランスパン的なハード系のパンを焼くのにとても適しているんです。だからおばあちゃんとかに聞くと、『コッペパンが普及するもっと前、大昔に国産の粉で焼いた“フランスパン的なパン”を食べた記憶がある』って言うんですよね」


「ーもしかしたら田崎さんが作っているのは、そんな“日本本来のパン”?」

「どうでしょうね?確かなことは言えないですけど、もともとがマニアックで凝り性な性格だから、なんでもハマるとその場その場で徹底的にやりますね。

小麦粉の研究所にいた時はあるメーカーのベーグルの納品の仕事をしていて、お客様に商品説明をするのに必要な知識だったので、徹底的に勉強したんです。パン屋になるつもりはまだなかったけど、逆にこの時の勉強が僕を後押ししてくれて、パン職人への道が拓けたのかもしれない。

大量生産のパン作りでは4種類くらいしか粉を使わないんですけど、僕は20種類の粉を使いわけることができます。パン会社でマニュアル通りのパン作りをするには邪魔な知識ですけど、 自分の裁量でパン作りができる今の僕にとっては大きな財産ですよね」



「ー「パン屋になりたい」って夢が最初からあったんじゃなくて、身につけたモノがいっぱいくっついて『パン屋になる』って目標ができた。」


「うん、だから今思えば空手の経験だって役に立ってると思うよ。パン作りっていうとオシャレなイメージを持つ人もいるだろうけど、最後は体力勝負だよ。

寝ないで、休まないで、働き続けて…でも空手でやった練習を思い出せば、これくらい乗り切れるって思える」




「ーあの苦しい練習にくらべれば。」

「苦しいって感覚は、僕、あまりないんだよね。思い出すとたしかに“苦しかった”のかもしれないけど、その時はそんなこと感じるヒマもなく、ただひたすらにやってるだけな気がする。

言葉にすると『3日完徹で働いて倒れた』ってなるけど、その時の感覚としては“時間なんて感じずに働き続けて、限界が来て、落ちた”って説明が近いと思う。倒れるって意識すらなかった(苦笑)。最初はお店だって、どうなっていくのか正直わからなかったし。

もしかしたら駄目になってたかもしれない。おかげ様で雑誌やTVで取り上げてもらえるようにはなったけど、この先だって気は抜けない」

「ーその時その時でベストを尽くし続ける。厳しい!真似できない!」

「だから僕の人生を希望って呼んでいいのかって(笑)。ただ、学歴がなくても、明確な目標がなかなか見つからなくても、“考えて、動き続けて、どうにかなった”って意味では、僕のケースは希望になるのかもしれませんね。

夜間の高校に通いながら花屋で働いた15歳。あれから20年。仕事も夢も、いろんなものを手にしては、あれも違う、これも違うって投げ捨てて行ったけど、その中で重たくってどうしても投げられないものが最後に残った。

僕の場合はそれがパン作りと接客だったんだと思います」





「ー接客、好きですか?」

「好きですね。ほめていただいたり、厳しいことを言われたり。いろんな考えのお客さんと話していくうちに、自分の考えもまとまっていく。今はベーグルやハード系のパンが人気だけど、オープン当時はそんなに売れなかったんですよ。

それをある時ブログで『ベーグルがおいしい』とほめていただいて、それを見たベーグル好きのお客さんが遠くからもどんどん来てくださって、主力商品となった。昔、別の所で雇われ店長をやってた頃は、売れ筋じゃない商品はすぐに引っ込めないといけなかったから、同じ感覚でやってたらベーグルは消えてたでしょうね。

でも僕にも『ベーグルやハード系のパンはイケる』という自負があったから、売れなくても作って売り続けた。数字やデータで売れ筋を調べるより、自分の感覚を信じた方が、長い目で見れば良い結果が出ると思ってます」

「ーワニガメの形をした“ワニガメのパン”なんて、会社じゃまず却下ですよね(笑)。」

「いや、アレが若い女性のお客さんに意外と人気あるんですよ!ただワニガメを扱った爬虫類のブログで取り上げられるところまでは、ちょっと予想してませんでしたね(笑)」



そう、ワニガメのパンってヤツがあるんです、ここのお店には。たぶん世界でひとつ。僕はまだ買ってないけど(笑)。

「接客が好き」という田崎さんの言葉が心に残った。パン生地とにらめっこするだけじゃなくて、お客さんの顔も見てる。ひとりよがりな職人にならず、食べる人のおいしい顔を思い浮かべて、パンを作っている。

僕はファミレスやファーストフードでメシが食えないんだけど、それは作ってる人の顔が見えて来ないから。機械と、機械みたいな人たちが作ってるから。

おいしくないし元気も出ない。「これでも食っとけ」とバカにされてる気にすらなる。食べる僕は人間なんだから、やはり同じ人間が作った“ごちそう”をおいしくいただきたいのです。

みなさんも田崎さんのパン、一度食べてみてください。よろしく!




(取材・文章/高山量宇)

■ライタープロフィール

高山量宇
1972/01/16生 A型 北海道旭川出身

ライター。別名・高山リンダ×2。週刊プレイボーイ、集英社ビジネスジャンプ、紀伊国屋書店WEBなど様々な媒体で記事を執筆。格闘技の世界にも深い造詣がある気鋭のライター。

高山さんブログ↓
http://blog.livedoor.jp/samwriter/


***


 

>>>インタビューを終えて

フリスタの意志を正確に理解してくれている、ありがたい友人でもあるライター高山さん。
その高山さんが熱く是非紹介したいという人が今回の田崎さんだった。

僕は常々こう思っている”有名だとか、したり顔して、みんな頑張れ!とかいう人間の言葉に誰が勇気をもらえるっちゅうねん!”

それよりも本当に人間が救われたり、勇気をもらえたりるのは、同時進行でこの世界を同じ目線で生きている人びと。

そんな意味で今回の田崎さんは僕の中でドンピシャだった。

田崎さんは学歴もなく中学を出てずっと働いている。そんな田崎さんから感じる力強さになんて救われることか。

そして僕は田崎さんの“考えて、動き続けて、どうにかなった”という言葉にこの世界の結論を見る。

本当にこの言葉がこの世界の全てだと僕は思う。


あ!あと、パン僕も食べさせてもらったけど、まじで美味い!!
しかも本当に安い!!

すごいよ(笑)自分が同業者だったら困っちゃうくらい(笑)






<フリスタ編集長MIZK>



***




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