vol.1
「 僕が写真を撮り始めた理由 」
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”どうして写真を撮り始めたのですか?”
よく、そう人に聞かれます。
そう、聞かれるたびに、我ながら、
”うーん、どうしてなんでしょうねえ(笑)”
と、お茶を濁したりするのですが、
でも本当の理由は自分ではわかっています。
理由はこれです。
”一人だったからです。”
これを、真顔で言うと、なんか引かれるだろうなあ、
と、いうのと、
ま、実際、言ってみたこともあるんですが、
”はあ、一人だったからですか…”
と、反応が芳しくないので、最近はあまり言わないんですが(笑)
しかし、結局のところ、これは事実で、
今も、この思いで、日々、カメラを手にします。
僕はあまり人づき合いがうまくない思春期を過ごしたので、
若い頃は、あまり友人というものに恵まれませんでした。
なので、常に楽しそうにしている人を羨んでいた気がします。
それは、実は今でも変わりなく、
大勢で楽しそうにしている人を見ると、
心の底から羨ましいと思うと同時に、
こう、感じます。
”淋しいなあ、どうして僕はみんなみたいにうまくやれないのかなあ…”と。
ずっとこんなことを感じながら生きてきたのですが、
ある日、突然、この淋しさにつきあってくれる友人が出来ました。
それがカメラであり写真でした。
写真は僕が一人でいることを、初めて肯定してくれる、
とてもありがたい友人でした。
普通、世の中で生きていると、多くの人に混じり、
溌剌としていなくては、ダメであるみたいなことになるものですが、
写真や、カメラは一切、そんなことを言いませんでした。
それどころか、
一人になりなさい、一人になって世界中の美しいものと、対峙するのです。
一人になって、誰にも頼らず、自分の心と素直に向き合うのです。
と、堂々と言ってくれる存在でした。
人は弱いですから、自分のいる理由というのが、見えなくなると不安になると思います。
その不安に対峙する方法のヒントをカメラは与えてくれます。
写真を撮るという、この世に存在するに充分な理由を、写真は与えてくれます。
だから、言いたいのです。
昔の僕のような、淋しい者よ、悲しい者よ。
写真を撮りなさい。
写真はきっと君の友人になってくれるであろうと。
とにもかくにも、これが、僕が写真を撮り始めた、最初のモチベーションです。
今は、その上に、愛が乗ったり、感動が乗ったりと、
色々と姿を変えてゆくんですけどね。
そんなこんなの、フリースタイルフォトコラム、第一回。
ま、始めから、こんなウエットな話になって、先が思いやられたりもしますが(笑)
木藤 MIZK
2010-4-12
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