出産の日がいよいよ近くなってきた。
毎日、臨戦態勢の状態だ。
出産の立ち会いを約束している僕は、
いざという時すぐに動けるようカバンに常に10万円つっこんでおくことにした。
というよりも常に10万円携帯しておけと、彼女株式会社の指令により支給された。
僕はフリーランスで仕事をしているので、いわゆる会社組織の呪縛からは解き放たれているが
妻という巨大組織にはがっちり捕まえられている。
なんか、彼女から給料を支給されているみたいだ。
だからタイトルは、株式会社 ”彼女”
ああ、楽しきかな拘束生活。
話はそれたけど、
これで日本国中どこに出張していても彼女のいる病院へとたどりつける。
でも冷静に考えてみると、僕のカバンの中にはノートPCやデジカメ、デジビデオなどの
仕事道具がぎっしりつまっている。
今回の10万円を加えると総計50万円だ。
なんて金額だ。
僕の着ている服は上下で1万円くらいだ。
なんて金額だ。
カバンが歩いているようなもんだ。
しかも、この50万円のカバンは思わぬ弊害を僕にもたらす。
仕事帰りに「酒場」に行けないのだ。
もちろん、行くのは自由なんだけど、悲しいかな僕は深酒すると
けっこうな確率で忘れ物をするという癖がある。
実際、昔、カバンを忘れてしまったこともある。
こわい。
さすがにこのカバンは失くせない。
というわけで、株式会社 彼女に勤務する私は
肌温かな拘束を身にまといながら
今日もまっすぐ家に帰るのでありました。
チャンチャン
…つづく
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