散々、ばかにされながらも何とか仕事をしてきて、 業界の掟なんかもわかり始めてきて、 少し仕事になれてきたかな、と思い始めた時。 僕は自分のいる広告業界のことがなんとなくわかってきた。 そして理想と現実に皆、苦しんでいるのが、 なんとなくわかってきた。 極めて単純に言えば、 業界にいるほとんどの人が実は、仕事に辟易していた。 口では自分の業界は面白いと言うが、 その目に輝きはなかった。 自分で自分に暗示をかけているように見えた。 そして、その、あまりのオーバーワークで疲弊しきっていた。 (※皆平均、一日15時間くらいは当たり前に働いていた。) そして疲弊しすぎてマゾ的になってきていて、 皆で病気自慢をするなどどいう異常事態に陥っていた。 皆が競っていた。 何時間、寝ていないかを。 どのくらい胃が悪いかを。 どのくらい家に帰ってないかを。 そして、どのくらい家庭が不和になっているかを。。。 そしてそれが確実に後輩たちにも悪影響を与えていた。 そんなマゾの先輩たちに引きずられ、後輩も当然、 家には帰れなくなった。 恋人と別れるものも大勢いた。 体を壊すものも大勢いた。 僕はその光景を冷静に見ていた。 そして冷静に分析していた。 そもそも、なんで、みんな、こんなに働かされなくてはならないのだろうと、シンプルに疑問に思っていた。 そしてその結果、この業界のピラミッド構造に気づいた。 広告業界ほど、多くの代理店をはさむ業界を僕は知らない。 ※あとは建設業界もけっこうはさむかも知れない。 そして、当然だが、その構造のトップ、もしくはNo.2 くらいが美味しい目を見れる。 そして、当然だが、末端である人間が一番大変な思いをする。 ※はっきり言うけど大変なんてレベルを大幅に超えた状態。 そしてその末端とは、僕のようなほぼ制作プロダクションのような弱小広告代理店だ。 僕が見た中で、もっともひどかったのは、こんな構造だ。 ------------------------------ クライアント(大手外資タバコメーカー) ↓ 超大手代理店(電通とか博報堂とかですね。) ↓ 大手代理店 ↓ 中規模外資系代理店 ↓ 中規模代理店 ↓ 小規模代理店 ↓ 僕のいた代理店 ------------------------------ これは本当にわけわからなかった。 だが、このくらいの複雑な構造も実はそんなには珍しくない。 これが現実だと思うとさすがに、僕は肩を落とした。 さんざん、日雇い労働でピンはねされてきた僕が 表の世界にまわって、さらにピンはねされる。 なんだよ! おい、なんなんだよ! という思いが、ドンドンたまっていった。 そして、その頃たまたま、亡くなってしまった青木雄二氏の著作を読んだ。 青木氏は「ナニワ金融道」で有名な方だが、 この人も本当に流転の労働人生活を送ってきた。 その青木氏が明言した言葉 「サラリーマンというのは、本当は一日2時間分の労働で自分の給料分は稼いでいる。そして残りの労働は基本的に搾取されている。」 この言葉は、仕事、業界、状況によって異なってくるが、僕の業界にはぴったり当てはまると僕は思った。 そしてこの言葉が、僕の脊髄を直撃したのを覚えている。 ちなみに、僕は共産主義ではない。 この時も、今も。