ふざけた独立をやめにして
僕は新たな職を探しはじめた。
25才の頃である。
ありふれた行為だけど、
また求人情報誌をめくる。
そして試行錯誤する。
行き詰まるとなけなしの金を持って酒場へ行く。
そしてくだらない酒を飲む。
そんな無為な日々の繰り返し。
しかし
そんな中、僕を悩ますひとつの情報が耳に入った。
その情報は昔よく遊んだ知り合いから入った。
内容は一緒に働かないかというもの。
それも違法な職場で。。。
どう違法かというと、ずばりカジノ。
一晩で何千万も動くと言われている裏カジノ。
ここでその知り合いはすでに働いていた。
それもトップディーラーとして、凄まじく金を稼いでいた。
ディーラーというのは、客を負かせた分が自分の利益となる。
すさまじく金持ちになっていたその知り合いは
同時にすさまじく客を負かしたのだろう。
昔から金運の強いやつだとは思っていたが。。。
とにかく僕はその知り合いに一緒に働かないかと
持ちかけられた。
金持ちになれるかも・・・
この誘惑は強烈だった。
僕はまずは会ってみようと彼のもとへと向かった。
久しぶりに会うその知り合いは、
まあ、昔のままだった。
ただ違うのは僕が極貧なのに対し
彼は完全に金持ちだった。
財布にぎっしり詰まった万札が正直うらやましかった。
その知り合いにつれられ酒場へと出向く。
そして話を聞く。
きわどい話の連発だった。
ボロ負けさせた客が逆上して銃をつきつけてきた話
職場のオーナーの過去の話
賭博業界と警察の癒着の話
女の話
薬の話
そして金の話
なんでも知り合いのいる組織は
関西のほうに進出するとのことで、
ぜひとも新しい人手が欲しいとのことだった。
それもすでに知っている信用の出来る
人間がいいとのことだった。
働けば衣食住はほとんど保証される。
聞けば聞くほど好条件だった。
ただ一つ危険であるということを除けば・・・
その晩は二人で飲んで朝を迎えた。
そしてちょっと考えさせてくれということで、
そのまま別れた。
見上げた朝日にクラクラした。
結論として僕はこの話にはのらなかった。
でも決断をくだすまでには相当悩んだ。
危ない橋だが人生を逆転するチャンスなのでは
ないかと思ったりした。
それくらいその頃のヤマっ気の強い僕には魅力的な
話だった。
でも、やめた。
理由は怖かったから。
知り合いの前ではかっこつけてそんなこと一言も
言わなかったけど、やっぱり理由はこれだった。
闇で生きる勇気はなかった。
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