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【 幕張にまつわる本たち 】



◇◇◇


幕張のことが記述してある本や、写真集なんかを、チラッ!!チラッ!!と紹介するページです。







■ 海を見にいく by 椎名誠 ■





1986年に出版されたこの本。

椎名誠氏が見て、触れてきた、さまざまな海に関する

思い出がつづられています。

その中の一節に幕張の海のことが登場しています。



残念ながら、現在では絶版のようなので、

さわり程度ですがここで、少しご紹介しておきます。

良い本ですので、本物を見たいという方は是非、

気長に探してみてください。






〜文中より〜

・・・幕張の海というのは、その昔潮干狩りで知られた遠浅のドロだらけの海である。

引き潮の時は海岸から1キロぐらい沖まで広大な干潟が出現し、そこではアサリや蛤が

面白いようにざくざく獲れた。

そうして僕は小学生から高校生になるまでの間、暇さえあるとこの海に出かけていたのだ。

その頃、その町の子供たちにとって海が唯一の遊び場であり、

さまざまな事件や刺激との遭遇の場であった・・・







・・・新米のサラリーマン生活をはじめるようになった頃、

「幕張の海が消滅した」という記事を新聞で読んだ。

海ははるかな沖まで埋めたてられ、潮干狩りも海苔の養殖もできなくなっていた・・・




「海はもうなくなってしまったよ」

とそのじぶんまでまだその町に住んでいた友達のイサムが電話をかけてきてそう言った。


それから、また10年ほどして、「幕張に海が戻った」という記事を毎日新聞で見つけた。

「ふーん」と思った。

あまり興味はわかなかった。

消えてしまった海にまた新しく生まれた人口の海岸、というのがどういう格好を

しているのかぼくにはもう、とても想像することができなかった・・・





・・・ところがさしたる意味はなかったのだけれど、

この小さな記事を見てから3年目になって、ふいに僕はこの人口の海が見たくなってしまったのだ・・・









・・・夕方以降にこの原は時々喧嘩場に使われた。

そうしてその頃、ビーズ屋仙一とイサム、それに漁師の息子の若松という、

坊主頭の三人が組むとかなりの戦力を持っていた・・・




・・・そのことがあってから検見川のチンピラたちと我々との抗争はなんとなく収まってしまった。

検見川のチンピラたちも、我々の集団も、それぞれ歳をとって、

もう少し自分のやるべきことを、きちんとやっておかないと将来えらいことになる、

ということに気がついてきていたのだろう。

そして高校3年になると僕もイサムも、もうあまり海には行かなくなっていた・・・









・・・小さな土手にのぼると目の前に海があった。

黒っぽい土が広がっており、その先にはやはり黒っぽい波がせわしなく打ちつけていた。

梅雨時の空は海のむこうがわでいやに重厚に、19世紀あたりの印象派絵画大作

ふうのかんじで垂れ下がり、その下に千葉の川崎製鉄所の煙突群がぼんやり見えた・・・








・・・ヨネクラと世千男とぼくの3人で、一晩キャンプしよう、ということになった。

キャンプと言っても、自分たちの町の海へ、テントと毛布を持っていってそこで寝る、というだけである・・・




・・・その翌朝のことだった。

ぼくはその日の感動を今でも忘れることが出来ないのだが、翌日、何年かに一度の

静かな大潮がやってきていた。

早朝が満開の大潮で、堤防からその日の海をはじめて見たヨネクラが、

「わあーっ!」

と、少年ぽい声をはりあげたのだ。


何事だろう、と思って急いで堤防にのぼると、ふだんの潮位のちょうど倍くらい

高いところに、波のない、おそろしいほど綺麗な海がひろがっていた・・・










…海は昼ちかくまできれいなままだったが、引き潮になると、あっという間に、

またいつものすこしドロっぽい海に戻ってしまった。

そうしてそれから何年か、この海を夏のたびに見てきたけれど、

とうとうあのように透き通ってきれいになることは無かった。



そして、あの頃埋立地を一面に覆い尽くしていた背の高い

黄色い花をつける雑草は、セイタカアワダチソウらしい、

ということをつい最近知った・・・






海を見にいく by 椎名誠 


より抜文




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また、探してご紹介します。

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